ブダペストの街を眺めることができる展望台の中でも、ベストスポットのひとつ 「 ゲッレールトの丘 」。

丘の向こうにドナウ川が緩やかなカーブを描いて流れ、「くさり橋」を挟んで、ブダ側の王宮、ペスト側の
聖イシュトヴァーン大聖堂の尖塔が一望に見渡せます。圧巻の眺め。

「 ゲッレールトの丘 」 の中腹には 「 ゲッレールト温泉 」 というのもあります。
この 「 ゲッレールト 」 とは、ヴェネチア人の宣教師の名前。エルジェベート橋の近くの丘の中腹で、町に
向かって十字架を掲げているモニュメントが、この人の像です。
聖イシュトヴァーンの深い信頼を受けながら、ハンガリーで布教活動を行ったゲッレールトですが、キリスト教
を受け入れなかった人々に捉えられ、ワイン樽に押し込められてドナウ川に投げ落とされました。
後にゲッレールトは、ハンガリーをキリスト教国に導くために死をもって貢献したとされ、イシュトヴァーンと共に
聖人として崇拝されるようになります。
彼の殉教した丘が、ここ 「 ゲッレールトの丘 」 です。

19世紀半ば、この丘は要塞として使われました。
60門の大砲が、こんなふうに並んでいたのかも知れません。

子供たちが無邪気に遊んでいました。
街を見下ろすこの丘は、逆に言えば、最も監視しやすい場所でもありました。

大砲の砲門は、こんなふうに、ブタペスト市民に向かって狙いを定めていたのかも知れません。
ハプスブルクの支配からの独立戦争の後、反乱の再発を恐れたオーストリア軍は、この丘に陣取って、
ハンガリー人を監視し、街を威嚇していました。

「 ゲッレールトのバスチーユ 」 と揶揄された恐怖の歴史も併せ持つのが、ゲッレールトの丘。
大展望という人々の憩いの場、癒しの場という光の側面と、暗黒の歴史の象徴という影の側面。両方の姿を
いまに伝えてくれている 「 ゲッレールトの丘 」 です。