
ブダ王宮の丘の一角、王宮の門をくぐった広い広場の隅に、宮殿の壁と一体化しているような、華やかな彫刻
で飾られた泉があります。
『 マーチャーシュ王の泉 』。別名 「 ブダペストのトレビの泉 」 と呼ばれるこの泉は、もう一度ブダペストに
戻って来たい人は、この泉にコインを投げると願いが叶うと言われています。
てっぺんで堂々と胸を張るのは、猟犬を連れて狩りをする 「 マーチャーシュ王 」。
王と獲物の鹿、右下には王とは知らずに恋に落ちる村の娘イロンカ、左下には二人の適わぬ恋の行方を
見守る宮廷詩人の姿が彫られています。

ブダにルネサンス文化を導いたマーチャーシュ王の生涯は、数々の伝説に彩られています。
泉の 「 狩り伝説 」 もそうですが、王は自分の身分を隠してお忍びで諸国を回り、役人の不正を正したと
言われています。
まるで、「 黄門さま 」 ですね。
王宮の丘には、このほかにも、其処此処に彫刻が建っています。たぶん、ひとつひとつの彫刻に意味があり、
物語があるんだと思います。

ブダのお城で王宮文化が花開くのは、15世紀、マーチャーシュ王の時代です。国の中央集権化を進め、軍隊
を整備しする一方で、新しい文化を宮廷に積極的に取り入れました。
「 ヨーロッパの三粒の真珠、それは水のヴェネチア、平地のフィレンツェ、丘のブダである 」 と讃えられた街。
ハンガリー王朝は、このマーチャーシュ王の治世のもとで黄金期を迎えました。
