ブダの王宮の丘から眺めるドナウの流れは、雄大で悠久で、いつまで見ていても飽きません。
ドナウ川に最初に架けられた橋が 「 くさり橋 」 で、架けた人はセーチェニ・イシュトヴァーン伯爵です。

30年近い歳月と多額の資金を投じて完成した 「 くさり橋 」 ですが、完成した1849年はハンガリー独立戦争
でハンガリー側が敗北した頃。このため、開通した 「 くさり橋 」 を最初に渡ったのは、ハンガリー市民ではなく、
独立戦争の指導者を処刑するためにやってきたオーストリアの将校と軍隊だったそうです。
この橋は、第二次大戦末期に一度破壊されています。当時、ドイツ軍の支配下にあったブダペスト。敗戦
濃厚になったドイツ軍は、ブダペストを退却する際に、ソ連軍の追撃を恐れて橋を爆破しました。
破壊された橋が昔の姿に修復され、改めて開通したのは1949年、つまり開通の日からちょうど100年後の
ことでした。
そんな歴史を持つ「 くさり橋 」 のたもとには民家が並んでいます。屋根に丸いものが沢山見えますが、
衛星放送のアンテナですね。

河岸に立ち並ぶのは、4~5階建て程度の集合住宅。結構古そうです。
どう見ても周辺に駐車場らしきものが見当たりません。車を持っている人が少ないのか、路上に置いている
のか、別に駐車場があるのか・・・。

部屋の広さまでは分かりません。当たり前のことですが、ドナウの雄大な遠景の足元では、日常の生活が
営まれています。
ここに住んでいる人たちにとって、ドナウはどんな意味を持っているんだろう?
アパートの窓から見えるのは、王宮の丘に押し寄せる大量の観光客。反対側には、四六時中 「 くさり橋 」
を眺めることができます。夜にはライトアップされるので、おそらく遅くまで観光客のざわめきは続くのかも
知れません。プライバシーは、あって、ないようなもの。
夏の間は、毎週末、歩行者天国として開放される 「 くさり橋 」。普段は厳めしい表情を見せている橋ですが、
この時期は屋台やストリートミュージシャンたちの賑やかな笑い声や音楽が響くそうです。それを楽しんでいる
のが、この辺の住民たちの日常なのかも知れません。