
昨夜の晩酌です。
秋田県湯沢市、両関酒造の『山廃 特別純米酒』。
近くのお店の冷蔵ケースで「飲み頃」に冷えていました。応対に出て来たのが、お店のおばあちゃん。
少し腰が曲がり気味ですが元気元気。オマケにポケット・ティッシュもつけてくれました。
パッケージは薄い黄色で「山廃」と大書、下に「特別純米酒」、上に「両関」の表示。とにかく
「山廃」の文字が目立ちます。「山卸廃止」の略だということは、以前このブログでも解説した通り
ですが、大抵の人は“まず、分からない”と思います。何のことやら・・・。単なる「商品名」と思うのが
一般的でしょう。
他の酒蔵からも「同名」のお酒が沢山出ています。それを、大抵の人は、造りの違いという意味では
なく、銘柄の違いだけで買っていると思います。「山廃」が3つ並んでいれば、いつもとか前に呑んだ
ことがあるとかまたはただ知っているとか・・・、だから○○酒造にヤツにしよう、という結論になるの
では?実際に呑んでみると、同じ山廃でも酒蔵によって、結構違いがあります。

原料米;美山錦100%、精米歩合;60%(だから「特別純米」)、使用酵母;AK-1、
日本酒度;+1.0、アルコール度数;15.2度、酸度;1.5、アミノ酸度;1.4、甘辛濃淡;淡麗辛口
ここまで表示しているラベルは珍しいですね。とくに「使用酵母」「日本酒度」「アミノ酸度」。
買う側にとっても、これだけの情報があれば助かります・・・が、どれだけの人がこの情報を読み
取れるかとなると疑問です。それに外箱に入っていれば、分からない。店頭で箱から中身を出して
見るのは相当の勇気が要ります。そういう意味では、お酒のパッケージや商品説明は、全般的に
不親切で買う側の立場に立っていませんね。
『日本酒は日本古来からの「国酒」。造り方には様々な方法があるし、すごく奥が深いんだぜ。
君達ちゃんと勉強して、一目見て違いが分かるようにならなきゃダメよ・・・』と言われているような
感じがします。とくに中身や製法の違い、その結果となる名称の違い、値段の差、とにかく複雑です。
それに比べると、他の酒類は分かり易いですね。産地、原料、度数、商品名ぐらいで、だいたい味
と値段が想像できます。日本酒は表示をもっと単純にするか、そうでなければもっと皆さんに分かって
もらうような知恵を出さないと・・・今のジリ貧は解消しないような気がします。
味の違いは、「呑み比べ」てみないと分かりません。本当に微妙なところは、「呑み比べ」ても
分からない場合もあります。つまり2つ並べて、素面の状態で「呑み比べ」ないと分からない。毎日の
晩酌で「2つ並べて」呑み比べる、なんてことは大体奥さんが許してくれませんね(笑)。
それに、こんな時代になると、毎日呑む酒だからできるだけ安い方がいい、たまに外で呑んだ時も
呑み屋にも「表示」がないから一番安い方にする・・・最後は安酒呑み過ぎで悪酔い・・・となりかねません。
ワインの世界では、「ロゼ」の造り方や定義を巡って喧々諤々。どうも最終的には「伝統的製法」が
勝ちそうな勢いです。日本酒だってパック酒なんかは本来日本酒とは表示できない製法をしている訳で、
本当に原料も製法もしっかりした、日本人の体にやさしいお酒を「適量」呑むのが「普通」になるときが
来て欲しいと思います。
ところで、両関酒造の「山廃 特別純米酒」。この暑さで冷やして呑みましたが、喉越しよく、適度
な重さとまったり感があって美味しくいただきました。「山廃」独特の「舌にまとわりつく」感じが
あって、それもしつこくないので呑み易かったです。「ぬる燗」ぐらいにすると、もっと「山廃」特有
の香りが立ってくるような気がします。
美味しくいただきました。