
「人っ子一人歩いてないけど、ここ、どこ?」
『おう!ようやく目が醒めたかぁ!さて、どこでしょう?』
“あなたが眠っているうちに、随分走ってきたのよ。”

「あぁ、アーケードの上に名前が書いてある。サンロード・・・。」
“そうね。サンロード日吉商店街よ。”
「んで、どこなワケ?」
『全国どこにでもありがちな名前だね。これだけじゃ分からないところが日本らしい。』
「・・・・・・・・」
『その昔、経産省を通産省と読んでいた頃、商店街近代化事業というのがあってね。』
「うん」
『全国各地の商店街を「近代化」して、アーケードをかけ、歩道を整備し、名前を募集し、看板
なんかも統一したんだ。』
「どうして?」
『国の政策だね。それで商店街が良くなると考えた人たちがいて、それに乗っかって補助金や低利
融資を引き出せると頑張った人たちもいたんだ。』
“お父さんも、そのためにしばらく仕事していた時期があったわ。貴女がまだ小さかった頃。”
「ふぅーん。その成れの果てがコレなわけ?」
『・・・・・・・』

「あっ!人が歩いてる!自転車に乗っている人もいる!」
“あら珍しいわねぇ。ここはまた違う商店街に入ったんじゃないの?”
『そうだね。アーケードの形が違うでしょ。たぶん時期的には、こっちが後じゃないかな?』

“古びたコミセンみたいな建物があるわ。でも結構立派!”
「コミセンじゃなく、コミュニティ・プラザって書いてあるわ。ああ!鶴岡なのね!」
『正解!貴女が居眠りしている間に、車は鶴岡の中心商店街に入ったよ。』
“今日は、鶴岡探検ね!”