「近未来落語」というキャッチフレーズがついていますが、良く分かります。
桂文珍さん、昭和23年生まれ60歳。最近は風格さえ感じるほどになり、落語会を引っ張る一人です。
その「独演会」に行って来ました。

とにかく笑えます。こんなに笑ったのは、ホント、久しぶり。とくに第一席の「マニュアル時代」は
最後の落ちまで腹を抱えて笑い続けていました。マニュアル通りに応対する飲食店の店員をネタに、
崩れかけている日本語を痛烈に風刺しています。会場全体もまさに笑いの渦でした。
第二席は、日本の会社員が中東で能を演ずる話。第三席は、宿屋で「手水」を使う話。
いずれも抱腹絶倒状態に “させられました”。

文珍落語の特徴は「メッセージがはっきりしていること」と「居合い抜きのように、瞬間的にズバッ!
とやられる感じ」でしょうか・・・。最新の社会経済国際情勢を理解していなければ “笑えない” “つい
ていけない” 鋭さが魅力です。
あとは独特の「間」の取り方。計算しているとは思えません、修行で身につけた自分だけの「間」
だと思います。他に弟子の桂楽珍さん(愛嬌のある顔立ちで、計算していないドジぶりで会場を沸かせ
ました)の落語と内海英華さんの寄席三味線がありましたが、その二人の持つ「間」とは全く違います。
文珍さんは、「間」だけでも笑わせる力を持っている人です。
この、「間」だけでも笑わせられるのは、若くして逝ってしまった桂枝雀さんに通じるものがあり
ます。枝雀さんも随分前にナマで見たことがありますが、フッ!と、こちらの息が止まるような
「間」の取り方に痺れました。

『落語的学問のすすめ』(新潮文庫)は、文珍さんが、関西大学文学部国文学科で講師を勤めたとき
の本です。前期と後期の講義分、都合二冊。中身の説明は不要だと思います。文珍ワールドが縦横無尽
に展開しています。楽しく一気に読めます。
それにしても文珍さんって、頭いいですね・・・。今回の独演会もホトホト感心しました。
一度サシで呑み明かしたい人です。