『学年誌メモリーズ☆昭和の少女まんが』 | ド少女文庫

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編集者&ライター・粟生こずえによる、少女漫画・小説をはじめ少女ごのみのあれこれを語るド少女魂燃焼ブログです。

いよいよ「学年誌」という言葉が通じない時代になってきました。

 

小学館の『小学○年生』は、現在のところ『小学一年生』を残すのみです。

(全学年対応として『小学8年生』が2017年に創刊されてはいますが…。)

 

私自身、長く学研の『学習』『科学』の編集に携わっていたのですが

こちらは2009年をもって廃刊しています。

 

あきらかに男子向け・女子向けの記事/マンガはあったにしても

互いにそれを共有できた時代はゆるやかに終わりに向かっていきました。

 

80年代頃からは『月刊コロコロコミック』や『コミックボンボン』が

男子のホビー文化を牽引する存在となり

また小学生女子対象のファッション雑誌が台頭し

かつての「学年誌」のスタイルはしだいに時代に合わないものになっていったのだと思います。

 

 

ここで紹介する

『学年誌メモリーズ☆昭和の少女まんが』(小学館)には

「学年別学習雑誌 昭和49〜56年の作品 姫ヒロインとバレエ伝説編」という副題がついていますが

まさにこの「昭和49〜56年」は、学年誌最後の黄金時代だったのかもしれません。

 

 

収録マンガは

『おはよう!姫子』(藤原栄子)

『うわさの姫子』(藤原栄子)

『パンク・ポンク』(たちいりハルコ)

『ハーイ!まりちゃん』(上原きみこ)

『ガラスの靴』(飛鳥幸子)

『ハッピータンポポ』(室山まゆみ)

『さっちん110番』山田路子

 

室山まゆみ先生の作品で、あえて『あさりちゃん』ではないチョイスが渋い…。

 

一作ごとについて語り始めるとかなり長くなってしまうので

ここはグッとこらえます。

 

本書の刊行を知ったとき、私が一番高まったポイントは

バレエマンガ『ガラスの靴』でした。

 

 

当時、連載のごく最初の方しか読んだ記憶しかなく、

しかしそのインパクトは強烈に残っていて。

大人になって古本マンガ漁りをするようになってからもなかなかめぐりあえず

(そもそも、小学生同士貸し借りしまくってボロボロになる「てんとう虫コミックス」は

古本で当時ものを探すハードルが高いのです)

見つかったとしても、かなりの高値で手が出なかったのです。

 

 

本書には『ガラスの靴』の最初の2話が収録されています。

何より見たかったのは、第1話でヒロインのゆう子が

目かくしをして平均台の上を歩くシーンです。

 

記憶の中に書きこまれていたのと寸分違わぬ絵でした。

 

ストーリーを知りたいという気持ちももちろんあったけれど

私はただただ、この絵を見たかったんだなあと実感しました。

また、マンガを読む上で、こういうことってたびたびあるなぁと

改めて認識しました。

 

そして、もうひとつハッとしたコマがありました。

 

この物語の冒頭は、かなり『小公女』に近く、

簡単に言うと「セーラ」的であるゆう子に対し

「ベッキー」的役回りのマリという少女が登場します。

 

このマリが、学園をあげてのゆう子の歓迎会の席で

少ないおこづかいから贈った

ガラスのトウシューズのブローチが描かれたコマを見た瞬間、

当時の自分の姿がいろいろ思い起こされるような感覚を覚えました。

 

リボンのモチーフから2本の細い鎖で、トウシューズがぶらさがっているデザイン。

 

「ガラスの」×「トウシューズの」×「ブローチ」。

 

この3つの言葉は、いずれも…ひとつだけでも当時の私の気持ちを昂揚させるもので。

それが3つ連なっていることで、とんでもない相乗効果を生み出している、と思うのです!

 

あ、「当時の私の気持ち」と書きましたが

今でも十分昂揚します!

 

マンガって…いえ、マンガに限らずですが

ほんとうにちょっとしたディテールが重要で、

そうしたものの積み重ねが作品世界を築きあげているのです。

 

 

ちなみに『ガラスの靴』は現在電子書籍化されています。

さっそく全巻買って一気読みしましたが…こんな日が来るなんてねぇ!

 

もう一度読みたいマンガ、当時読み損なったけれど気になるマンガが

こんなふうに、何かのタイミングで手軽に読めるようになるかもしれません。

 

 

 

この『学年誌メモリーズ☆昭和の少女まんが』が刊行されたのは

2017年末ですが、このちょっと前には

ウルトラマンシリーズ関連の記事をまとめた『学年誌ウルトラ伝説』(小学館)が発売されています。

 

さらに今年、2018年には

『学年誌が伝えた子ども文化史 昭和40〜49年編』

『学年誌が伝えた子ども文化史 昭和50〜64年編』という気になるムックも登場。

 

昭和の子なので、ばんばん買っていきたいと思います!