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その事件は、小さなできごとでしたが、大きな流れを産み出すことになります。
離婚から半年とすこし経った、ある夏の暑い日のことでした。
虎キチは、次郎をある大きなスーパー銭湯に連れて行きました。
ちょっとしたアミューズメント施設を併設しており、入場料も普通のスーパー銭湯よりお高めです。
虎キチはそこで次郎と入浴し、遊んでやり、最終的には横になれるごろ寝スペースで漫画でも読みながら、モラ美の迎えを待つつもりでした。
「つまんない」
「ゲームセンター行きたい」
次郎がゴネ始めました。
いちばん近くのアーケードまではだいぶ歩きます。
入浴したのに夏の昼間に歩くって。
俺の車は使用禁止だし(モラ美理由、女の車は汚いから)
しかし次郎がしつこくゴネます。
仕方ない。
虎キチは次郎をゲーセンに連れて行きました。
「ガチャガチャやりたい」
「ここで(キッズスペース)遊びたい」
「これで遊びたい」
「Mac食べたい」
虎キチは、このとき初めて、次郎に違和感を覚えました。
コイツ、
遊びたいからそう言ってるんじゃなくて、
金を使わせたいからこう言ってるんじゃないか?
事実、虎キチの感じた違和感は事実なのです。
自己愛性人格障害の人間は、そう他人を振り回すことで快感を得ることがあるのです。
この子の母であるモラ美もそうでした。
お金を使ってくれる=愛されている
こうした歪んだ構図の心理を持っています。
(だから虎キチの財産は食いつぶされた上に、離婚後も金銭的に異常な条件がつけられているのです)
虎キチの心にふと浮かんだ言葉。
「コイツ、金食い虫」
優しく感受性の強いはずの幼い我が子を見る虎キチの目は、このとき白々としていました。
そしてこのときのことが呼び水となり、虎キチの心がまたもや大きく動かされる出来事が起こるのです。