不倫をやめた泥棒猫 ② | 泥棒猫の言い分

泥棒猫の言い分

愛した人を略奪しました。

その男は、バリバリ働くビジネスパーソンで、日経からも取材を受けたことがある。

イヤったらしい勝ち組臭を漂わせてた。

ファーストコンタクトでは、オランダでやったネゴだの、マカオでSP雇ってまで行った危険な取り引きだのと、楽しいけど要は自慢話が洪水みたいにとめどなかった。

深い関係にはわりとすぐに進展した。

遊び慣れてる楽しいヤツで、私もけっこう満足してた。

 

 

 

 

 

 

 

ある日、彼からキャンプの誘いがあって、参加した。

彼の人脈の楽しくて派手な連中が20人ほど集まってた。

バーベキューやってると、ハプニングで網がダメになって、予備の網も忘れてきたという。

 

「嫁に持って来させるよ」

 

 

 

私はそれを聞いてちょっと不思議に思った。

私が思う彼の妻は、イメージ的に派手な女でバリバリキャリア、つまり彼を女にしたようなタイプだったので。

私は、嫁に全く興味なかったから嫁について聞いたことなんかないし、彼もそんな話をするほど野暮な男じゃない。

休日出勤でもしてるんじゃなかったのか?

家にいるんだ?

専業主婦なのか?

じゃあ、呼んでやればいいのに?

それほど夫婦仲が悪いのか?

 

 

 

 

 

 

でもま、

そこまで考えたけど、

他人に本当に関心の持てない薄情者の私なので、

 

 

ま、いっか。

よそんちの問題だし私関係ない。

 

こんな感じでそのまま忘れた。

 

 

 

 

 

 

しばらく経って、私がたまたまバケツに水を汲みに行ったら、

キャンプ場所から離れた茂みに、何かコソコソ隠れるような感じで、彼と知らない女性が話してた。

網を受け取ってるようだった。

 

嫁だ。

 

反射的にそう思った。

彼らの隠れるような態度に、思わずこっちも見られないよう、そっちへ行かずに見守った。

 

嫁は、

何年も美容院に行ってないようなボサボサのロングヘア、

毛玉だらけのトレーナー上下、

太めでスッピン、

ただのオバサン、

だった。

(顔立ちは整ってたので昔美人だった感じはあったけど)

 

遠いので何話してるのかまで聞こえなかったけど、

彼が早く帰って欲しげな、渋い仏頂面しているのと対照的に、

嫁は満面の笑顔だった。

嬉しそうだった。

役に立てて嬉しいです、

あなたが好きです、

そんな感情が伝わった。

 

 

 

私は、見てはいけないモノを見た気がした。