映画「風立ちぬ」 | 沈みかけ泥舟のメモ

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今はネタバレなしの映画感想ブログ化してます。

2015年ももうすぐ終わり。

今年は集団的自衛権を含む日米安全保障条約改正の強行採決があり
来年夏の参議院選挙では改正分と合わせて自民党が160議席を超えることが確実視され
2016年から数年以内に日本国憲法改正が現実になるのはほぼ確実な情勢です。

後の歴史で「奇跡の七十年」と記録されるかもしれない
他国民を殺したことがない軍隊を持ち、主体的に戦争をしてこなかった時代が終わるのでしょう。

そんな時だからこそ、改めてスタジオジブリの宮崎駿監督長編アニメ引退作と言われる
「風立ちぬ」をしっかり鑑賞してみました。

大日本帝国時代に実在した二人の人物をモチーフに描かれた物語です。

少年時代の主人公が飛行機で空を飛ぶ夢を見るシーンから始まるのですが、
最初から楽しい飛行の後に墜落という大日本帝国が軍部によって辿る未来を暗示したような作りです。

成長した主人公が上京する場面もヒロインとの出会いを絡めつつも
関東大震災の被災という破滅を描きこんでいます。
この映画は全編にわたって墜落や破壊のイメージを描いていて、
宮崎駿さんの戦争・軍事力行使に対する憤懣が見て取れます。

けれど、同時に戦闘機や工業機械に対する趣味というか愛着というかが溢れている印象もあります。
エンジン音が合成や実際の機械をサンプリングしたものではなくて
人間の声でそれらしく演じたものが使われているので機械に非常に暖かみが感じられます。

物語自体は主人公の飛行機に対する愛情が結実するまでを描いているという点では
「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」と同じく
非常にパーソナルな世界を描いていると言えるかも知れませんが
「風立ちぬ」の場合は現実を色濃く下敷きにしているためか
分かりやすいカタルシスのあるラストを表現出来ていないので
評価は分かれてしまうのかなという感じはしました。

個人的にはジブリ映画のトップ3に入る好きな作品です。

好きな飛行機作りが戦闘機作りでしか叶えられず
多くの若者達の命と一緒に帰ってこない発進を迎える。
日本がまた戦争に突入すれば誰かの役に立ちたいという望みや素晴らしい工業技術が
大量殺人に用いられる事に繋がる事になります。
そんな時代が来ないことを願いたくなる映画でした。