スーパーなどで、中村屋のカレーを一度は目にしたことがおありだろう。
パンやカレーで有名な中村屋に、相馬黒光(そうま こつこう)という女主人がいた。

彼女は、カレーのように男を魅了してやまぬ女だったそうな。

本名は、星 良。
相馬愛蔵と結婚し、相馬 良となる。

生まれは東北。士族の貧乏子沢山な家庭に生まれ、生活力のない父親の代わりに一家の長のような振る舞いをせざるをえなかった。

男尊女卑な社会にうんざりし、キリストに改心、家族まで無理やり改心させる。

彼女は、男を憎んでいた。

父は役立たずの駄目男。
兄はチフスにかかるわ、弟は骨膜炎で足切断。
その上、姉が突然婚約破棄されて発狂!

男なんて・・と、蔑み、美しかった彼女を慕いまとわりついてくる男を手のひらで踊らせ、楽しんでいた。

そんな彼女にも、一人、思いを寄せた男がいた。
画家の布施淡。
デートを重ねていたのに、ああ、なのに!彼はいつの間にか自分と違うタイプの女(しかかもイケてない)と、婚約した!

ショックで、つい周りから薦められていた田舎出身の地味な蚕研究家と結婚。

あ、やっちゃった!と思っても後の祭。

幸いにも夫は芸術家な友達が沢山。
これ幸いと安曇野の自宅にサロンを作って交流。
でも田舎って閉鎖的だし、何もせず暮らすの性に合わない。
病気になり、このままじゃ死んじゃうと、子供を人質に田舎へ置き、上京。
上京するとたちまち元気に復活。
でも生きていくには、なにかしなくちゃ。
東大赤門の前にあるパン屋(中村屋)買い取って、二人でやらない?
途端に繁盛。新宿に支店を出して、移転。
また芸術家らが入り浸り、サロンとなる。(名物カレー誕生。)

さて。そのなかに旦那のお友達、荻原碌山という彫刻家がいた。
彼は黒光にベタぼれ。
忙しそうに働く美しい女主人。
蚕の世話で実家に帰ってる友の愛蔵にちょっと挨拶しておこうと安曇野に寄ったら、田舎娘とイチャイチャしてるのを目撃!

ちょっ、なにしてんですかアンタと怒り心頭。
黒光から「夫の浮気で悩んでいるの」と相談をうけている間にいい関係に。

が、しかし。
いくら一緒になろうと言っても、また貧乏になるのもなぁ。色々捨てるのもなぁ。と、黒光はうじうじ。その上、夫との子を妊娠していた。
なんじゃそれ、あんたら俺をバカにしてるんか!俺一人で踊らされてたんか!
と、心労が募りすぎたのかは確かではないが、荻原は喀血し、帰らぬ人に。

私って悪い女。

そう言いつつ女王は生涯自分の我を通し、男をペットのように上手いこと扱い、文芸作品を世にだしつつ、79まで生きた。

正に魔性の女。
カレーのようにどこまでも人を惹き付け、魅了してやまぬ女。

恐ろしい。ああ、恐ろしい。
そんなドロドロスパイシーカレー。
奥深い味わいの秘密は、こんな処に潜んでいるのでしょうか。

哀れよのう、荻原碌山君。