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 余談雑談  只管(ひたすらに)に生きる姿
―ドキュメンタリー「ブラジルの土に生きて」―



この話題を「余談雑談」というカテゴリーに入れることは、映像作家岡村淳監督に対しても、登場人物となっているブラジルの石井敏子さんに対しても、甚だ失礼なことかもしれない。

先日(4月25日up)、「余談雑談」のカテゴリーでドキュメンタリー作品の上映会のことを紹介させていただきました。http://blogs.yahoo.co.jp/dorinji/10069125.html
その報告と感想を述べようと思いました。感想の内容としては、「法話」のカテゴリーにでも入れたくなるような部分も多々有ります。しかし、「法話」であるとは言えないので、敢えて「余談雑談」のコーナーに分類させていただきました。

5月6日にその上映会があり、行ってまいりました。2時間半という時間の長さを感じさせない、味わい深い作品でした。ゴールデンウイーク最後の雨の日、日程的にはなかなか微妙な日である。仙台市民会館地下の視聴覚室が会場である。30人も入れば満員となる部屋であるが、昨年当寺で上映会を開催したときにも来ていた方、海外移住家族会や宮城ブラジル友好協会に関係している方、今回初めてらしい方等観客は20数名。上映会開催が決まったのが3月下旬。当初5月5日に予定していたのが、事情があって5月6日に変更。そういう状況も考えれば、大規模な上映会にするのはちょっと難しいでしょう。

 ブラジル国ミナスジェライス州で農場を経営する娘婿さん御夫婦と一緒に生活している、明治生まれの石井延兼さん敏子さんが主人公のドキュメンタリー作品です。




1、ブラジル移民史の生き証人


  石井延兼さんは、「ブラジル移民の父」と呼ばれる水野龍を呼寄せ人(身元引受人)として大正12年ごろブラジル移民となった方である。御実家は東京で問屋を営んでいたというから、かなりの富裕層と言える。田畑を分けてもらえない農家の次男三男や、土地を持てない小作人の家族などが、ブラジル移民の大半であったと聞いている。そういう時代にあって旧制中学を卒業して移民となった石井さんは、当時としてはかなりのインテリであった。水野龍というブラジル移民事業の中心人物の側にいたこともあって、 石井延兼さんの言葉には移民史を知る上で貴重な証言も多いようである。もう少しブラジル移民史の本でも読んで勉強した上で、この作品を見ればもっと面白いのではないかと思いました。



2、只管に陶芸に打ち込む姿


 妻の敏子さんが語る「陶芸の話」は非常に含蓄があった。70歳から陶芸を始めた敏子さんですが、陶芸を通じて人の輪も広がり、作品も高く評価され、自分自身も陶芸を通して多くのことを学んだことを語っている。

曹洞宗で、道元禅師の門流で、ひたすらに坐禅を行ずることを「只管打坐(しかんたざ)」と言います。敏子さんが陶芸に打ち込む姿には、「すたすら」なものがあり、「すたすら」さを語る言葉があった。

また、現状に満足することなく、常にその先その上にあるものを目指していると石井敏子さんは語っている。禅の世界では、こういう求道心のことを「仏向上事(ぶっこうじょうのじ)」と言っています。
これで石井さん夫妻が禅の修行でもしていれば、「法話」なるのでしょう。岡村監督によると、石井さん御夫婦はサンパウロ在住の時はプロテスタントの教会に通い、その後も教会には寄進しているそうです。そして、ミナスジェライス州の農場の家では毎日夫婦共に聖書の言葉を唱えています。ですから、法話にはなりません。

 しかし、どんな宗教に所属しようとも、どんな信仰をもっていようとも、ひたすらに道を求め歩み続ける姿には、学ぶべきものがたくさんある。そう教えてくれるドキュメンタリー作品です。

 岡村監督自身、この作品の取材を通して、またその後のお付き合いを通して、石井敏子さんから多くのことを教えていただいていることを述懐しています。
http://www.univer.net/1_nanbei/0607.html

 岡村監督は5月12日に浜松での上映会を終えて、サンパウロに帰られるそうです。来年また上映会を開催したいと言うファンもかなり増えています。きっと来年も日本各地で岡村監督作品が上映されると思います。ぜひ、多くの方々に見ていただきたいと思います。必ず心に響くものがあると思います。


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