平成15年に洞林寺護持会創立30周年を迎えるにあたり、秋彼岸中日に記念式典と記念講演を開催し、記念誌を刊行しました。記念講演は私の恩師である宗教人類学者佐々木宏幹先生にお願いしました。そして、記念講演の補助資料として、記念講演「迷わず仏になるためにーホトケから仏へー」理解のためのキイワードとして記念誌に下記の文章を掲載しました。
 私の独りよがりな文章に終始する危険性もあると思われたので、佐々木先生にお願いし監修していただきました。ですから、内容的にはあまり見当はずれのものにはなっていないと思います。仏教学・宗教学の基本的なところを抑えていると思っております。、
 記念誌の紙幅による制約もあり、また飽くまでも記念講演を聞いた檀家さんたちの理解の助けになればという点に重きを置いております。ですから人によっては説明が不十分と思ったり不親切と思ったりするかもしれません。私自身説明が足りないと思いますし、もっと加えるべき項目があると思っております。
 少しずつ追加・更新していきたいと思っております。



「迷わず成仏するためにーホトケから仏へー 」

質問(教とはどういうものですか。


読んで字のごとく、仏陀の教えであり、仏陀となる教えのことです。仏陀とは覚者とも表現されますが、すべての真理を悟った人のことを言います。仏陀は真理を悟ることにより、人生の苦を超え、この上ない心の平安の境地を実現されたとされます。仏陀が略されて仏と表記されるようになったようです。



質問◆(となるためにはどうすれば良いですか。


まず、仏法僧の三宝に帰依することです。そして、仏戒を受け、仏弟子となることです。仏弟子となり修行を重ね仏陀と同じような宗教的境地になって行く。これが成仏です。



質問 仏法僧の三宝とは何のことですか。

答 仏とは仏陀のことです。仏様のことです。法とは教えのことです。仏の教えです。お経に説かれている教えのことです。僧とは一般にお坊さんのことを指しますが、この場合の僧は僧伽(インドの言葉ではサンガと言います。)のことを指します。
 
僧伽とは、仏教徒の集まりのことを言います。僧侶がいて、檀家信者もいて、共に仏を信仰し仏の教えを学び行じていく人々の集まりのことです。仏を信仰しその教えを守り学び伝えて来た方々がいるからこそ、今日の私たちに仏の教えが伝わりお寺が存続してきたのです。お寺の護持会こそ、現代における僧伽(サンガ)なのです。


質問ぁ(教とイスラム教・キリスト教との違いが良くわかりません。どう違うのでしょうか。

答 イスラム教キリスト教は絶対的な神(アラーもしくはヤーヴェ)の存在を前提とする宗教です。神に絶的な信仰を捧げ神の愛を賜ります。仏陀とは真理を悟った覚者であり、人は発心修行することで仏になれる(成仏する)というのが仏教の立場です。キリスト教やイスラム教で、人間は神にはなれません。
 別な表現をすれば、キリスト教・イスラム教は命令型の宗教、仏教は自覚型の宗教ということも出来ると思います。



質問ァ〃觝Ъ阿録声阿任笋蝓△葬式は仏式でする。日本人は宗教に関して無節操だ、という意見がありますが、いかがなものでしょうか。

答 日本人は宗教に対して無節操だ、ルーズだ、と批判的に見る方もいます。見方を変えれば、おおらかである、懐が深い、と言うことも出来ると思います。キリスト教やイスラム教のような一神教では、あれかこれかという選択を迫られます。唯一の神を選択する必要があるのです。そして、自分の宗教以外の宗教を異端として排除する傾向があります。

 日本人の場合、あれもこれもという感じに、それぞれの宗教や信仰の良い点を選び取ってきたのだと思います。この柔軟性・包容性が今評価されています。日本人の素晴らしい点だと思います。