前回の続きです。
夫の姿も見えず(まだ到着していません)、誰も私の目を見てくれない。
うろたえていると、主治医が側に来ました。
逆子で足が出ていて帝王切開は間に合わないから、今から普通分娩で生みます。
それだけ説明されました。
早い週数の出産は赤ちゃんのために帝王切開になるとずっと言われていたのに、赤ちゃんはどうなるのか?
ちゃんと生きて生まれてこれるのか?
聞きたかったけど怖くて聞けませんでした。
この時、夫は私の母を車で拾って病院へ向かっていました。
病院に着く10分程手前の地点で主治医から電話があり、
「帝王切開が間に合わないので普通分娩になりますが、到着を待つ時間がありません。母子共に危険な状態です」
と告げられ、震えながら運転したそうです。
痛みはどんどん強くなっていき、とにかく「力をぬいて、息を吐いて」と指示されました。
出産はまだまだ先と思っていて、しかも帝王切開になると思っていたので、出産の仕方もよく分からない。
痛みに耐えるのと言われた通りにするのに必死で頭が空っぽになってました。
どれくらい時間が経ったのか、「今、いきんで!」と言われ、力を入れました。
「もう一回!」と、もう一度思い切り力を入れると、スルッと出てきた感覚がありました。
すぐに周りがバタバタして、息子の処置にかかりました。
私は近眼で、このときにはメガネを外されていたため横にできた人だかりしか見えません。
たくさんの人の頭で息子がどんな状態なのかも分かりませんでした。
「ボク、頑張れ!頑張れ」
「頑張れ!頑張れ!」
皆が息子に声をかけてくれていました。
処置をされた息子がNICUに運ばれる直前に、誰かが私のメガネをとってくれて息子を見せてくれました。
保育器の中に驚くほど小さな赤ちゃん。
そっと触れさせて貰いました。すごく温かい。
ちゃんと生きている。
感激している間もなく、すぐに慌てて外へ運ばれて行きました。
主治医が、息子は卵膜に包まれて生まれてきたと興奮気味に教えてくれました。
(卵膜に包まれて生まれることを幸帽児ということを後で知りました)
そのおかげで、逆子でも途中で引っかかることもなく、傷もつかずに出てこれたと。
産科部長が「あんたが一番上手やったな」と誉めてくれました。
でも、息子が私のことも息子自身も守ってくれたんだと思いました。
お母さんが頼りないから、自分で頑張って出てきてくれたんだと。
生まれてくるときからすごかったね、最後までずっと強かった。
生まれてきてくれて、ありがとう。
すごく、すごく嬉しくて、幸せやったよ。