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主に自作の逃走中を載せています。

 
 
 
「黒の貴婦人」西澤保彦著
 

 

 

 
 
 
 
匠千暁シリーズの短編集第3弾で「招かれざる死者」「黒の貴婦人」「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」「ジャケットの地図」「夜空の向こう側」の5つの短編が収録されています。
 
 
 
 
 
 
 
 
大まかなあらすじ
 
「招かれざる死者」
千帆は安槻大学新入生の有馬の家で開かれたパーティーに参加することになった。だがその最中来客が来て有馬が玄関を開けたところ女子大生の死体が倒れこむ。有馬は隣に住む老人が騒音に腹を立てて殺したのではないかというが。
 
 
 
「黒の貴婦人」
祐輔はあるときいつも飲み会をやる居酒屋に白い服を着た貴婦人がいることに気づく。彼女は店の限定品の鯖寿司を食べた後そのまま帰っていくが彼女はなぜいつも飲み会で出くわすのかと疑問を抱いた祐輔は千暁たちの中に彼女に飲み会を開くことを教えてる人物がいるのではと推測する。
 
 
 
「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」
 
安槻大学に通う女子大生たちは安槻市の何もない山奥に建てられた別荘で過ごすことになる。彼女たちの集まりに参加することになった千暁だったが夜が明けると別荘の外で思わぬものを発見したことから事態は急変する。
 
 
 
「ジャケットの地図」
 
ある会長の秘書兼愛人だった女性が会長の亡き後彼が大切にしていた宝物を記した地図の入ったジャケットを探すことになる。やがて彼女はそのジャケットを持っているとされる長瀬友春という男にたどり着く。
 
 
 
 
「夜空の向こう側」
祐輔と由起子は東京にいる千暁と千帆のことを考えながら飲んでいた。途中由起子は親戚の結婚式で起きた不可思議なご祝儀盗難事件の話をする。
 
 
 
 
 
 
 
 
感想(ややネタバレあり)
匠千暁シリーズの短編集の特徴としては時系列がバラバラで千暁たちが大学生の時の話もあれば卒業後の話もあります。今作で言えば「招かれざる死者」と「黒の貴婦人」は大学生の時の話で「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」「ジャケットの地図」「夜空の向こう側」は卒業後の話になっています。
 
 
「招かれざる死者」
本来来るはずのない女子大生が死体となって現れるという事件なんですが真相に関してはわかりやすいと思っています。犯人はこれまでの行動からして考えられない行動をしているのでそれに気づけば何かあるなと気づくことができるようになっています。だけどこの事件に隠されたもう一つの真実についてはわからなかったです。犯人だけでなく被害者の行動をどう見るかがカギとなります。
 
 
 
「黒の貴婦人」
居酒屋にいつも顔を会わせる貴婦人がなぜいつも鯖寿司を食べて帰るのかという謎。いつも顔を会わせることについてはあっさりとわかりますがなぜ彼女はいつもそうしているのかという点はいつものように酒を飲みながらいろいろと議論が繰り広げられます。この話は「依存」の前日談にあたる話になっていますのでこの話を読んでから改めて「依存」を読むと感慨深い思いになります。
 
 
「スプリット・イメージ 避暑地の出来事」
 
仲良し女子大生野呂ゆかり、斑鳩観月、井伊谷秀子、鯨伏美嘉、蓮実ケイが山奥にあるポツンと一軒家のような別荘で数日過ごしてみようという話から始まり直前に秀子と食事係である早栗亜古が来られなくなってどうしようとなった時に成り行きで千暁が女子大生たちと別荘に向かうことになります。だが楽しい時間はある事件がきっかけであっという間に不穏な空気になってしまいます。この話は千暁が主人公ではなく女子大生の一人である野呂ゆかりが実質主人公として話が進行していきます。途中彼女は真相にいち早く気づいたもののそれを口にすることはなくその後彼女が様子がおかしい場面もあったんですが真相を知った時そういうことだったのかと納得しました。その前にゆかりが知ったある秘密に関することがミスリードになって真相に最初は気づきませんでした。
 
 
 
「ジャケットの地図」
この話は主要キャラはある人物しか登場しません。誰なのかはあえて書きませんが読めばすぐにわかることだと思います。主人公はある会社の会長の秘書であり愛人(肉体関係なし)の名前の知らない女性となっています。彼女は生前いろいろと楽しい時間を一緒に過ごした会長が大事にしている宝の地図を探しに奮闘するわけですがよくここまで自力でたどり着けたものだと思いました。彼女の具体的なことはわかりませんが美人であることは間違いないようですがそれだけでなくいろいろ処世術を学んでいたのだろうかと思いました。
 
 
 
「夜空の向こう側」
 
祐輔と由起子が2人で飲んでおり千暁と千帆は2人の会話の中で名前だけ登場します。卒業後なかなか会うこともなくなった彼らが今後どうなるのかは作者にしかわからないと思いますが今後もこういうのがあればいいなと思っています。そんな中由起子は親戚の結婚式に参加した際そこで発生したご祝儀盗難事件についての議論が交わされるのですが由起子が偶然行ったある行為によりある真相にたどり着くのですがそれがなければ多分真相は犯人が口を割らなければ気づかないのではと思っています。しかし犯人はおそらく真相が明かされるのも想定内だと思うのでバレた時ある人物がどうなるのかが気になるところです。
 
 
 
 
 
 
登場人物紹介
 
長谷川渓湖
「招かれざる死者」に登場した安槻大学の学生であだ名はケーコたん。ミスキャンパス候補になるほどの正統派美人で男子からも人気がある。千帆のファンであり「招かれざる死者」の件で知り合って以降頻繁に飲み会に参加するようになる。千帆とはよく買い物に行くようになりキャンパス内では2人の関係は公認されている。「依存」で彼女のちょっと複雑な家庭事情が明かされる。
 
 
 
有馬真一
 
「招かれざる死者」に登場した。安槻大学の学生で千暁たちが3年になった時の新入生。かなり馴れ馴れしい性格で千帆を自分にふさわしい女性だと思って口説こうとしているが当の本人どころか女性陣からはアレマと呼ばれるなどかなり嫌われている。親に払ってもらったマンションに住んでいるが最近隣に住む老人から騒音に関するクレームが入るようになっているらしい。
 
 
 
野呂ゆかり
「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」に登場した安槻大学の学生。そこそこの裕福な家庭の生まれで買い物は親名義のカードを使っているとのこと。同じくそこそこ裕福な家庭育ちの秀子、観月、美嘉、ケイとよく一緒にいる。現在は女子校で教師を務める岡本壱成と交際中の模様。冬のある日に男性に襲われそうになったことがありそれ以降警戒心が強くなり寝る際に枕元に護身用のナイフを置いている。