新説『マジすか学園4』
#3830『アイドルに転職は難しい180 転生したらヒロインだった件』
一夜明けた火曜日の早朝、ロケバスが2台、欅寮の前に到着した。1台目は制作スタッフとエキストラ用なので、欅坂6期生とゆうゆ、それに舞香が2台目のバスに乗り込むと、既に乗車しているカムカムフレイバーの4人と挨拶を交わしたあと、舞香以外は各自の「指定席」に座った。舞香はキョロキョロしたあと、空いている2人掛けの座席に1人で座った。
🚌ロケバスの面々
ゆうゆ(SKE48 大谷悠妃)
舞 香(=LOVE 佐々木舞香)
『よこにゃん!その格好はどうしたんだー。桜花みたいに何かのPRか?』
バスが走り出しても、よこにゃんが起立したまま説明する。
『桜花さんの真似をした訳ではありませんよ♪今日の撮影が終わったあと、名古屋に行って水泳大会がありますよね♪カムカムフレイバーの中で私だけは水着にならなくて応援と雑用に回りますから、せめて目立たせて頂こうと思って、これを着て来ました♪この衣装で番組に出演させてもらいます♪』
リョウが残念がる。
『何だぁ。よこにゃん、水着にならないのか。ガッカリだな!』
『そうなんです…。すみません💦』
『別に謝らなくてもいいから、とにかく座ってくれないか』
『では、座らせて頂きます♪』
『そんなことより、土曜日のオイラーズの番組を観てたぞ。持ち込み企画で歌ったセイントフォーの曲で、よこにゃんが1番目立ってたよな。アクロバットがめっちゃカッコ良かった!』
1週間前のこの時間、バスの中で持ち込み企画は何をやろうかと、みんなが意見を出し合ってくれたことを思い出し、よこにゃんが嬉しそうに答える。
『ありがとうございます♪4人でセイントフォーさんの「不思議Tokyoシンデレラ」を歌って、アクロバットに挑戦しようと決めたんです♪』
『よこにゃんが1番派手な大技を決めてたしな。でもあのあとは何だったんだ?すちーずの7人がグダグダにし始めたら、最後は桜花が「好きになっちゃった」をセンターで歌う展開って。主役はがんばる子チームだったんだろ』
『そうなんですけど、あのやり取りは菅原さんに任せて、ぶっつけ本番の台本無しで、いつの間にか「好きになっちゃった」のイントロが流れてきて、桜花さんが歌い切りましたよね♪スタッフさんがそう判断されたのですから、私たちは仕方がないと思っています♪』
ここで笑い出すのは茜だ。
『はははっ♫桜花が歌ったのは、何も仕込んでなかったとでも思ってるの?』
よこにゃんだけでなく、優莉奈やはたごんとちかこが一斉に『どーいうこと💨』と迫るので、茜が教える。
『テレビで観てたけどすぐに分かったよ。あれは桜花がスタッフの人たちに催眠をかけていて、何かの合図であの曲のカラオケを流したり、カメラで追っ掛けて、つまりマインドコントロールされてたってことじゃない』
茜の指摘に驚くカムカムフレイバー4人の中で、優莉奈が呆れたように喋り始める。
『どうりでなー。何か変だと思ったんだけど、そういうことだったのか!まんまとしてやられたわ。今夜名古屋に行って桜花に会ったら、文句を言ってやらなきゃ。はたごんは桜花のこと、いろいろ詳しいんだよね。何か対策法はないの?』
はたごんが考える。
優莉奈に振られてはたごんが困っていると、いつの間にかバスが停車していて、せなたんがボストンバッグを持って現れたので、一斉にみんなの視線と興味が向けられる。
真っ先に声を掛けるのは今泉だ。
『せなたーん。確か1週間前にはこれからは1人で頑張ってやっていくって話してたのに、新しいアイドルグループに転職して、それもリーダーじゃないの。一体何があったの!?』
せなたんが近くの座席に座ってから答える。
今泉が聞き返す。
『星乃宮せなに転生?』
『うん。そうだ!今週分からクレジットも星乃宮せなに変えてもらわなきゃ。みんなも私のこと、"せなたん"じゃなくて、"せなちゃん"と呼んでくれないかなぁ』
『えーっ!せなたんの方が呼びやすくて愛着があるのにー』
『佑唯ちゃんがそう言ってくれるなら、せなたんのままでいいよ』
『ありがとう。それにしても何か凄いことになってるね。でも私はせなたんがアイドルを続けてくれたことが嬉しいな。その新しいグループのことについていろいろ教えてくれる?』
『うん。いいよ。でもアイドルじゃなくてヒロインね』
せなたんの説明にみんなが耳を傾け、話が盛り上がって誰も気付かないうちに、今度は音葉が乗ってきた。
『おはよう!音葉が乗ってくる時には、いつもみんなでせなたんを囲んで楽しそうだね。今日は何を話してるの?』
音葉に教えるのは由依だ。
『せなたんが新しいアイドルグループを結成してリーダーになって、星乃宮せなに転生したから、今後の方向性をみんなで話し合ってるところなんだよね。そうだ!音葉もそろそろ始動するなんてことはないの?予定があるのなら早めにうちらに教えてといてよね。いきなりだとびっくりするから』
『うん。分かった』
由依がもっと突っ込んで聞く。
◇続く