#3500 『マジすか学園4』 | 第7シーズン

第7シーズン

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新説『マジすか学園4』


#3500『君が隣にいてくれるだけで150(終) 策略の末路』



「SF翼のない白雪姫(最終話)」


さーなんはゆうゆを助けようともしない。今泉の方はゆうゆを見捨てて逃げるしかないと決断したらしく、後方へ駆け出した。由依も今泉に続こうとした時、足元にキラリと光る剣を見つけたので、魅入られたようにそれを手に取った。その重みを感じた時に思った。今は仮想空間にいるのではないかと…。

前にもこうして突然武器が目の前に出現し、襲ってくるゾンビを全滅させたことがある。そこで思い出した。シアターに来て仮想映像の世界に浸る時は、左手首にブレスレットを巻いていることを。これを習慣化してから1度も迷うことなく、自由に動き回って楽しんだ。由依は意識を左手首に向けると同時に右手で触り、ブレスレットが確かに巻かれていることを確認した。仮想空間に入り込んだ時の記憶は失っているが、ブレスレットを巻いている以上は何も疑うことはないのだと自分に言い聞かせ、剣を振り上げる。そのタイミングで目の前に迫った男の顔を目掛け、思い切り斬り付けた。

ゾクッとするような快感を残すと共に、相手の男が悲鳴を上げて倒れた。ゾンビの時と同じだ。これでもう不安に思うことはないと確信したので、次々と襲ってくる敵に対し、同じように攻撃を加える。そこで余裕が生まれたので、ゆうゆの上に乗っかっている男の頭部を目掛けて剣を一閃した。男は顔から血を噴き出しながら崩れ落ちた。

すぐにゆうゆの状態を確かめるが、ぐったりして動かない。手遅れになったかもしれないが、仮想空間なのだからまぁいいだろうと諦める。その後も付近にいる数人を斬り付けて、その場にうずくまらせた。これで敵の襲撃が終わったのだと由依は理解した。さーなんと今泉の姿は見えないが、このあとはどんなシチュエーションにしてあったかということの方が気に掛かる。そこでふと右手で左手首のブレスレットを触ろうとしてみたが、何の感触もない!由依は慌てて自分の目で確かめたが、左手首に巻かれていたはずのブレスレットがない!仮想空間にいることを伝えてくれる重要なパーツで、ついさっきは確かにブレスレットはあった。それだから足元に落ちていた剣を手に取り、襲ってくる敵を皆殺しにしたのに…。もしかして自分は現実の世界でこんな事件を引き起こしたのではないかと考え、背中に嫌な汗が流れる。絶望的な気持ちで立っていられなくなり、頭を抱えてかがみ込んだ。これが現実なら、もう1度寮を出発するところからやり直したいと…。


一方、防戦に徹して何とか難を逃れたせなたん。仮想現実を見せるシステムがついに破綻したのだと理解した。こんなことが起きてしまっては、もう継続していくことは無理だと悟った。そこでこのシアターを建設する際、上の人間に言われたことを思い出した。もし緊急事態に陥ったら、都会の本部に繋がるボタンを押せと。今はシアターに自分しかいないようだし、急いでボタンがある場所まで行き、迷わず押した。

その数10秒後には非常ブザーが至るところでけたたましく鳴り出すと共に、「危険です!急いで外に避難してください!」と伝えるアナウンスが繰り返し流れた。せなたんは自分の持ち物も気にせず、一目散に外へ飛び出した。


都会の本部では、シアターから緊急事態を知らせる赤いランプが点灯し、警告音が鳴った。休憩中の担当者が慌てて監視カメラの映像を見てみると、とんでもない事態が発生している。想定していた最悪のケースだ。現場を任せているせなたんとゆいりにも知らせていないが、店内やシアター周辺の監視カメラが映し出している映像を見て、取り返しのつかないことになっているなと分かった。向こうは田舎街の警察とは言え、今後捜査の手が伸びると非常に厄介だ。担当者が急いで隣の部屋にいる責任者に知らせたあと、指示通りに爆破ボタンを押した。これで証拠隠滅を図るのだ。その数秒後、監視カメラの映像がグレーの煙に包まれた直後、回線が途切れてしまった。


せなたんが10数m程駆け出したあと、立ち止まって振り返った瞬間、シアターが爆発音と共に吹き飛んだ。空に舞い上がるグレーの煙を見ながら、せなたんは呆然と立ち尽くした。


「SF翼のない白雪姫」

               <終>