新説『マジすか学園4』
#3248『彼女について知っていること48 触れられない事実』
「デリカキッチン」で買い物を終えた欅坂6期生とカフェ店員の一行、そしてすちーずに由美子を加えた面々が、メイドカフェ「カミングフレーバー」に向かっている。
由依はあやめとさくらの言動をずっと気にしている。みんなに迷惑を掛けたあんな騒動が勃発した理由を自ら話すかと思ったが、その気配は全くない。だから自分たちも聞けずにいる。カフェ店員のえなたんとみっちゃん、それにみれいとあなんも同様だ。大人しいフリをしてヘルプでやって来た2人が、実はかなりケンカが強くて、不良グループと揉めているような子たちだったとは、会ったばかりなのでとても突っ込んで聞けない雰囲気だ。そんな状況のまま、ようやく「カミングフレーバー」に戻った。
裏口から入って店内フロアにたどり着くと、由依が予想していた通りの言葉を、君江が投げ掛けて来た。
最後は大きな声に変わったのは、すちーずと由美子の顔を見たからだ。そこで答えるのは、昨日ドラマで共演したばかりの音葉だ。
『由美子とすちーずで食事会をしてたんだけど、そのあとこのお店に行こうって話になって、途中で欅坂の子たちと出くわしたんだよ』
君江が突っ込んで聞いてくる。
『へぇー。すちーずの子たちが遊びに来てくれたんだ。それはどうも。でもそれだけで、こんなに遅くなる?』
音葉と君江の会話を聞いていて、由依は焦ってしまう。店で待っている君江たちに、何て説明しようかという話し合いをしていない。不良たちに絡まれたが、桜花が撃退してくれたと話すことは問題ないが、絡まれた理由を聞かれた時、あやめとさくらが原因だったとは、本人たちの前で言えないからだ。音葉もその辺りの事情を薄々感じているのか、曖昧な返事をする。
『そんなに遅かった?音葉たちは途中で会ったんだから、遅いのかどうか、よく分からないんだけど…』
由依が音葉をフォローする。
『そうそう。途中でお喋りしながら歩いてたし、何を買うか、すぐに決められない子がいたんだよね。それに待ってると長く感じるものだよ。それよりお腹が空いた~。早く食べよう!』
『う~ん。そうなら別にいいけど…』
君江が何とか納得した。君江とひな乃のランチはえなたんとみっちゃんが買っておいたので、それとレシートを手渡した。
君江がすちーずと由美子に向かって、『急いで食べちゃうから、好きなところに座って待ってて』と言い終わったあと、ひな乃が続きを遮った。
『ちょっと待ったぁ。みんな何かを隠してるな。きみちゃんのことはうまく誤魔化したつもりだろうけど、あたしはそうはいかないから。あんな近くへ買いに行くだけで、途中でお喋りしてたとか、なかなか決められなかったレベルの遅さじゃないから。何があったのか、教えてくれないかなぁ』
由依はひな乃の発言に、ヤレヤレと思う。ケンカ慣れしていてるひな乃と君江だから、この辺りの不良に絡まれたと言っても、大して驚かないだろう。それも桜花が活躍して撃退してくれたのだから。問題は絡まれた原因となったあやめとさくらが何も語らず、清純路線で通しているからだ。2人は「デリカキッチン」からの帰り道でも、真相を語ろうとしなかった。途中で出会ったすちーずのみんなは、何か事情がありそうだと考えているようで発言を控え、えなたんとみっちゃん、みれいとあなんは、あやめとさくらのことを思って黙っている。あとは一番詳しい事情を知っている、由依たち6期生も同じだ。
◇続く