#2225『マジすか学園4』 | 第7シーズン

第7シーズン

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新説『マジすか学園4』

#2225『いくつもの坂道を越えて25 秘められた能力』


栄交差点でチラシを配っている女性が、2人組の男に絡まれている。サイコキネシスを操る亜柚香が対抗する気になっているが、冷静な長濱ねるから注意が飛んだ。
『どうやって助けるつもり。これだけ大勢の人が見ている街中で、騒がれないようにやるんだよ』
『うーん💦』
一転して亜柚香が困り顔に変わった。そのまま考え込んでしまうと、すぐ横を通り抜けて前に出ようとする者がいた。今泉佑唯が誰だろうと思って見てみたら、萌夏じゃないか。ついさっきもたまり場で、初森第二の面々に向かって堂々と抗議に出たばかりだ。正義感の強さには感心するが、今の方がずっと深刻なケースだ。萌夏1人で片付くような状況じゃない。そのあとの展開を考えて萌夏を止めなくちゃと判断した瞬間、小林由依が先に声を掛けた。
『萌夏!亜柚香が何とかしてくれそうだから、それまで待って!』
萌夏が聞き入れて立ち止まったが、これで亜柚香に一層のプレッシャーが掛かることになってしまった。

そんな時、男たちを注意する勇ましい女性の声が、佑唯の耳に聞こえた。聞き覚えのある声だなと思って振り返ったら、なんとシャチホコセブンのはるたむ(二村春香)じゃないか。いつの間にか男たちの前に立っている。今朝シャチホコハウスで遅めの朝食を食べていた時にはるたむもいたが、そのあとすぐ大学へ登校して行った。佑唯はハウスで何度も泊まっているが、よく考えるとはるたむとはすれ違いばかりで、面と向かってじっくり話したことはまだ1度もない。いつも笑顔を絶やさず、明るいメンバーだということは知っているが。

はるたむは以前にも見たことがある、落ち着いた感じの学生らしいブレザーを着ている。大学の授業が終わって栄にたまたま来ていたのだろうと佑唯は思った。ケンカ慣れしていそうな男たちに対し、たった1人で大丈夫だろうかと不安だ。案の定はるたむの注意がまるで効いていないどころか、新たな標的にされそうだ。すると男の1人が腕を掴もうと手を伸ばしてきた。掴まれる瞬間にはるたむが軽く払いのけたので、男の形相が変わった。今度は身体ごと距離を詰めてはるたむに迫る。
『俺たちのことバカにしてんのか!』
はるたむが果敢に言い返す。
『バカにはしてない。ただこの人に絡むのはやめてと言ってるだけでしょ』
『うるせーんだよ!これは俺たちの問題だ。黙って引っ込んでろ!』
『そんなわけにはいかないわ。引っ込んでるのはあなたたちじゃない!』
『分かった!じゃあ、おまえが代わりに相手をするんだな。よく見たら結構可愛いじゃねえか。どっかで見たような顔してるし。じゃあ、ついて来いよ』

男がもう1度はるたむの腕を掴もうとしたが、また同じように躱された。さすがに今度は二人掛りで迫ったが、素早く逃げられて身体に触れることさえ出来ない。この失態に怒りが込み上げたのか、ついにタックルするような形で勢いをつけたが、軽く背後に回られ背中を押されたので、勢いを止められず植え込みに突っ込んだ。残ったもう1人の男が罵声を浴びせながら殴り掛かったが、はるたむに腕を決められ逆方向にねじられた挙げ句、振り回されたので歩道の上に転がった。明らかな力の違いを悟った男たちは、これ以上やり合っても勝ち目はないと判断し、定番になっている『覚えてやがれ!』の捨てゼリフを吐くと、走って逃げて行った。


◇続く