秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

「そうか。平日だったらこっちに居るから会えるけど、例の仕事の件でガタガタしてて、まだスケジュールわからないから、はっきりしたらすぐ教える!じゃぁ、また来週!」
渋るかと思われた徹の返事はあっけなく明るかった。


私は月曜日に高幡不動まで行って念誦を買い、徹用のエッセンスを取り寄せた。
徹は実家に帰って来ると、ただいまのメールを私に打つ。
その夕方私は手が離せなかった。
しかし翌日の夜まで今度は徹に連絡が取れなかった。
「急遽でめちゃくちゃ大変… 例のヤツいきなり明日くるんだ!えと、今後の予定について!」
「今後の予定って?」
「今まで一週間のうち4日こっちで3日向こうだったのが、逆になるってこと」
「うん、わかった。そうだよね」
徹は仕事のことで舞い上がっていた。しばらくはお金にならない、成功するかは全く未知数だった。しかし無為に時を過ごすよりよっぽど良いことで、仕事のことを事細かに話す声が弾んでいて私は嬉しかった。
しかしそれは同時に私達の関係の消滅を感じさせた。
実家で3日しか過ごさないなら、私と話す時間もろくに取れまい。

いつだったか徹は言っていた。「このまま自然消滅になるのであろうかぁ…、俺の気分次第か…」
全くそうだった。おそらく長いこと私の気持ちは変わらないだろう。だから私達の関係は徹次第だった。ただ快楽の予感に酔っていただけで、私達の関係に展望も発展もなく、あるとしたら最後に残る穏やかな友情とも言うべきものだろう。
私の想いなど知ってか知らずか徹は「来週の火曜日に帰って来るから」と、いつものように一方的にまくし立てて出かけていく。私の想いだけが取り残されていた。


徹のエッセンスを調合し、罹災証明を見ながら定形外郵便のあて先を書く。そこに書き込んだ徹の本名をつぶやいてみた。取ってつけたような響きを何度もつぶやく。念誦も一緒に入れて膨らんだ封筒をポストに無理無理押し込んだ。
先の見えない中途半端な気持ちのまま、あっという間に季節が変わっていく、再び台風が来てコオロギが秋の気配をにじませている。

私の街から徹の街まで2時間と少し。遠いと思っていた福島は思いのほか近く、後は徹の予定次第だ。きっと私はまた愚かな選択をするのだろう。それで仕方がない。そのようにしか生きられないのだから。
火曜日まで彼のことを考えないように、想いを引きずらないようにするために今これを記している。
アップしたらしばらく徹のことなど忘れてしまおう。おそらく難しいだろうが。


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