200倍の実験台 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

息子の誕生日祝いにアイクロップス を買った。
「面白いよ、テレビにつないで200倍になるデジタル顕微鏡」
「へ~、それは面白そうだ」


たかしがやって来た時に
「これこれ!」と、自慢してみせた。
柱に当てて木の表面を見たり、服に当てて布地の拡大を見せた。腕に当てると私の産毛が剛毛に見える。

たかしの眼がキラッと光った。
「おおぉ、すごいなぁ
 貸して貸して


 doorちょっと脱いで」
「へ?」
「服脱いで」
「いや、それは…」


たかしの顔を見るともう完全に眼が逝っていて科学少年の眼になっている。あるいはマッドサイエンティスト。話し方も普段のペースの3倍くらいの早口になっている。

そもそも息子に与えたおもちゃをこんな使い方をして良いのだろうか。


「あの…」
「いいから、いいから、いいから、いいから、いいから、いいから」
「ちょっと待って、何で私?たかしが先じゃなくちゃ嫌だ」
「分かった、分かった、分かった、じゃ僕が先でいいから」

上手く乗せられているような気がした。
たかしのジーンズを脱がせてアイクロップスをたかしの性器に押し付けてテレビを見ると、ただの皮膚が映っていた。腕の皮膚よりも肌理が粗かった。


「皮膚だね」
「うん、ただの皮膚だ。ハイお終~い
 じゃ今度はdoorの番」
「やだ~、いきなりそこ?」
「じゃぁ乳首を見てみよう」

可笑しくなって噴出した。マッドサイエンティストの実験台になった気分だ。乳首に当ててみると色の付いた、ただの皮膚が映っていた。
「色の付いた皮膚だよ」
「乳首はどうかな」
乳首には上手くピントが合わなかった。基本的に平面を見るものだからピント合わせが難しい。
「ダメだねー、ピントが合わないや」

ふと我に返って、中年の男女が裸になって何をやっているのかと思う。可笑しくて可笑しくて咽てしまうほど笑った。

「じゃ次」
「やだやだ、恥ずかしいし、きっとただの皮膚だよ」
「皮膚なら良いじゃん
 はい、はい、はい、はい」
こういう時、恥ずかしさより絶対に好奇心が勝ってしまうのが私だ。その辺はたかしにとうの昔にばれている。

「分かった、じゃ見てみよう」
婦人科の検診台よろしく、覚悟を決めると、後はたかしに任せて私はテレビを眺めていた。
「えっ」
「うゎーエッチだー」
四角いテレビ画面にバラ色のテラリとした粘膜が映っている。アイクロップスはLEDで対象物を照らすから、なんだか妙につやつやとしてエロティックだ。
「なんか思ってたよりきれいだな」
「うん、凄く綺麗だ」
だんだん潤いを増してくるのが眼で見える。
「door、濡れてきたね」
「うん」
少しだけ動かしてみると、画面もゆっくり動いた。
「うわ~エッチだ~」「やらしぃ~」
たかしは飽きずに微妙に場所を変えて観察していた。
私は自分の肉体とも思えないものに興味を失って異常に眼がキラキラしているたかしを観察していた。

「たかしぃ、なんか凄く楽しそうだよ」

「うん、楽しい、凄く楽しい」
「そろそろ…」
「もうちょっとだけ
 うわ~」

半ば呆れ、半ばくすぐったく、喜んではしゃいでいるたかしを眺めるのも楽しかった。



まいっか…