痛い私 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

Google mapのストリートビューが、凄いという話は聞いてはいたが試したことはなかった。

ふと試してみる気になって自分のうちを見てみたら見慣れた風景が目に飛び込んできた。プライバシーの侵害、空き巣狙いの下見になるなど、問題視する人がいるのも無理はないと思う。
ただいつも思うことだけれど、道具はあくまでも道具であって、どう使うかは個人に委ねられているのである。


自分の住まいの周りをあれこれ見た後、以前住んでいたところをあちこち見て回った。懐かしい光景が目に飛び込んでくる。ずいぶんと変わったところもあった。

一通り見終わった後、たかしの最寄り駅を見た。どこに住んでいるのだろう。家にはお嬢さんたちがいるから私は一度も訪れたことがない。住所を知りたければ車の中に車検証があるだろうから、別に彼に聞く必要もない。駅の周りは写真で見たことのある光景らしきものが写っていた。


地図を見ながら私の頭の中が勝手に動き出す。いつか交わした会話。何気ない情報。
「何階に住んでいるの?」
「○階」
「ベランダから富士山が見えることもあるんだよ」


「たかしんちは駅から遠いの?」
「そんなに遠くはないよ」


「ホンダのディーラーから歩いて○分もかかった、暑かったよ」


雪の日に送られてきた写真には向かいの特徴のある、しかしどこにでもある建物がおぼろげに映っていた。


その辺りにあるホンダのディーラーから歩いて○分の距離で、駅からそんなに遠くないところ、○階以上のマンション。西が見える向き。
私は何をやっているんだろうと、ふと思う。けれど頭は地図を見ながら勝手に動いている。


果たして向かいには特徴のある、どこにでもある建物があった。

そのマンションの名前で検索を掛けると、売りに出たほかの部屋の写真まで見ることができた。


あらら、そんなつもりじゃなかったのに。
自分のやっていることに気がついて、あまりの痛さに愕然とする。私がこんなことをしているなんて知られたら、引かれるだろうなぁ。

ただちょっと興味があっただけで、そこまで行き着いてしまう。そんな私がいる。
そしてそんな人は山のようにいるんだろう。