気がつけばいつの間にか曇っている窓ガラスのように、ドレッサーの上に積もる埃のように何かが溜まってしまった。満月の頃、メールで彼に絡んでしまう。
滓のように溜まってしまった気持ちを整理してみたら、ゆっくりと二人で過ごす時間が欲しかったことに気がついた。そこで眺めの素晴らしい部屋を予約した。
ところが情け無いことに私はあっさりと眠くなってしまった。いつも飲めないからと二人で飲んだビールが原因。夜中過ぎに目覚めて、たかしの腕の中にもぐりこんでまた寝た。目覚めた時に手を伸ばしてそこに温もりがあるのが嬉しい。包んでもらえるのが嬉しい。
ごくたまのご褒美として。
朝、目が覚めたらちゃんと仕度をしたたかしが座って港を眺めていた。
たかし、そんなにちゃんとしようとしなくても良いんだよ。
刻んだ時と共に想いもまた刻まれるから、私は座っているたかしの足を両腕で抱きしめた。
いつも言えない言葉を口にしてみる。
「帰っちゃダメ」
「帰りたくない」
幸せに生きるコツをわかっているハズなのに時々逆戻りしてしまう。
今その瞬間を味わうこと。
だけどやっぱりついつい飴のように砕けた過去を思い出してみたり、タバコの煙のような未来を描いてみたりする。
今という時間を留めて置こうとしてはいけない。わかっているのにね。