満たされた気持ちのまま、たかしのいびきが聞こえたと思ったら、私の意識も途切れる。セックスの後のうたた寝ってどうしてあんなに気持ちが良いのだろう。それはたかしも同じ意見だ。
二度寝の至福に似たものがある。
私たちは夜を一緒に過ごすことが出来ないから、そう感じるのかもしれない。
目覚めると4時。あと一時間半。私がどんなにそっと身を起こしてもたかしは目覚める。
「まだ休んでいて」
私は残された時間をちょっと考えて、流しの下からオリーブオイルを取り出し湯煎にかける。
疲れているだろうからコーンのエッセンス
を2滴加える。
それを持って、寝ているたかしの所に戻ると
「ジャジャーン」と彼が立ち上がった。
布団の中から飛び出したたかしは服を着ている。
なんてことだろう。裸のままで良いのに。
「オイルマッサージするから脱いで」
「えっ、いいよ」
「これは匂いがしないから大丈夫よ」
いつも使っているマッサージ用のオイルはラベンダーの香りがする。オイルをふき取っても薫る。
家に帰ったパパがラベンダーの香りをプンプンさせるわけには行かないだろう。
かといってこれからお風呂に入ったらやっぱり湯冷めしてしまう。だから匂いの付かないオイルを使うことにした。
たかしは喜んで瞬く間にまた全裸になった。
「パンツまで脱がなくて良いんだけど」
慢性的な腰痛を抱えているのに何故セックスは出来るのか私は不思議だ。
痛んでいる腰、お尻の真ん中の足の付け根を揉み解す。それから首、肩、背中。
たかしの身体がみるみるオイルを吸い込んでいく。
「う”~ん、う”~ん」
たかしの喉から呻き声。先ほどの快楽とはまた少し違う快楽にうめいている。
昔誰かに言われたとおり、セックスにおいても多分に私は男性的なのだろう。相手の反応を見て満足するところがある。それをセックスそのものに持ち込まないようにオイルマッサージとして切り離してみた。
「う”~ん、う”~ん」
オイルマッサージは素人が適当にやっても充分効果があるし官能的だ。うめくたかしに私は満足する。手はまた腰に戻って40分たっぷりの愛撫。
「さぁ、今度は国分寺の桜を観にいきましょう」
閑散とした武蔵国分寺跡の桜は八分咲きだった。今度はいつ逢えるかしらね。