香港ドール15 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

生理中で男と入浴しない何日かはともに食事をするだけだった。入浴をして肌と肌が触れ合うことが、何かとてつもない恐怖感を持って迫ってくる。
入浴中からその後にかけて二人の間を走る緊張感が、怖かった。初めの頃のわけの分からなさとはまた少し違う。どうかこのままで、今のままで。
トイレットペーパーに包んだ生理用品のゴミが今日は出なかったのが悔やまれる。私は黙っていた。しんさんも黙っていた。しばらくするとしんさんはまた私の頭をポンポンと軽く叩いて出て行ってくれた。


浴室に湯を張り、自分ひとりで入浴する。ちょっと冷静になったほうが良い。
しんさんは私を閉じ込めている人。でも私をあの地獄から救ってくれた人でもある。しんさんの行動は訳がわからない。この部屋には半分裸に見えるような薄い寝巻きしかなくて、それは娼館上がりの私には当然そういうことだと思われた。でも前提が違うのだろうか。だったらあのキスの意味は?


昼間寝てしまったから目が冴えて眠れない。私はずっとしんさんの行動の意味を考えていた。
少なくとも、穏やかな意図を持っていると信じたいのは私の甘さなのだろうか。目が見えなくても少しでも何かできるように応援してもらっていると思うのは愚かな考えなのだろうか。
しんさんのことをもっと知りたい。私はしんさんの食事の好みや、モーツアルトが好きなことぐらいしか知らなかった。


ねぇ、変だよ私、何であんなにドキドキしたの?
あんなキスぐらいでいったいどうしたの?
誰でも良いの?しんさんのことが好きなの?どこが好きなの?なにを知っているというの?
ろくに口も利いてくれなくて、説明しようともしなくて訳が分からないじゃない。
なんか変だ。私は変だ。変だ、変だ。
こんな風に閉じ込められているからだ。頭のねじがきっと少しおかしくなってしまったのだろう。
こんな風に私がしんさんのことを好きになってしまったことで入浴はきっと耐え難いに違いない。


編み物を取り出してはため息をつき放り投げる。
ハーモニカを手にとって少し吹いてみる。「金髪のジェニー」

きっとしんさんもどこかで聞いたことがあるはず。音の高低が分かれているからハーモニカだと難しいけれど、どこか懐かしさを感じさせるその曲はハーモニカの音色に良く合った。


しんさんが喜んでくれると良いなぁ。


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