香港ドール6 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

「嫌だ、止めて。私を放して、止めて、止めて」
私はその男に手荒く扱われたことはなかったけれど、やはり圧倒的な力で繋がれてしまう。


「放して、返して、
ヤッポン、ヤッポン、プリーズ」


繋がれてしまった私は頼むより他になかった。
口元に冷たい感触の阿片パイプが押し当てられる。


「ノー、ノー、嫌、嫌、
帰りたい、帰して、私を帰して
ヤッポン、プリーズ」
頭を振って吸引を拒む。すると男は自分で阿片を吸って私の顔に吐き出したのだろう。
息を止めて吸わないように努める。
カチカチと小さな音がしてなにやら甘い香りが強くなる。


「ヤッポン、プリーズ」
頭がぼうっとしてくる。退廃の香り、タバコと入り混じった甘い阿片の匂い…
その匂いが顔の前に襲ってくる。ほら、頭がぼうっとしてくる。


「死にたくない、死にたくない、助けて
助けて!
お母さん」
母の顔を思い出して、力なくすすり泣く。


「お母さん助けて…」

男がタオルを持ってきて手錠で繋がれた私の手に乗せた。だるくて、体が重くて反応できない。
そのままにしていると涙と洟でぐしゃぐしゃになった顔を男に拭かれた。
やがて手錠から片手が抜かれ、ベッドの支柱から抜かれ再び両の手は結び合わされる。ベッドの中に横たえられてなだめる様に頭を撫でられる。引き続く阿片の匂い。
頭の芯が痺れてくる…
いったい私はどうなるのだろう。


翌日の朝食は中に肉を挟んだ万頭だった。小さなスープの器にぬるくなったコーンスープが入っていた。不自由な手を使って立ったままかぶりつく。
エアコンが止まっていて部屋の中はすっかり冷えていた。昨夜煙を立ち込めさせるために電源を切っていたらしい。用意周到なことだ。
男のことを考える。男の背後について考えようとする。
ほら、阿片のせいか思考が途切れてゆくのが自分でも分かる。
食べ終えると再びベッドに戻るしかなかった。


動物園の動物はきっとこんな気持ちに違いない、と不意に思った。捕らえられ、閉じ込められ、世話をされ、何もすることがない。サル山のサルはまだいい、仲間がいるから。象などはたった一人でこんな気持ちなのだろう。たった一人で異国に繋がれている…
思いついて私は自慰を始めた。
この間まで売春宿にいた私が自慰をするのは奇妙なことだと思った。もっともあそこでは快楽はなかったけれど。おぞましさと苦痛、屈辱と暴力。順繰りに引き続く痛み、痛み。
両手を皮手錠で繋がれた不自由な体勢で自分の中からなんとか快感を引き出そうと努力した。
疲れては休み、目覚めては自慰に熱中した。もう他にすることがなかった。
繋がれた手が、指が疲れてうごかなくなるまで、自慰を繰り返すと身体は温まり、何度も達してはとろとろと眠り、目覚めるとまた自慰を繰り返した。


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