たまには贅沢しようよとイタリアンレストランに行く。私はずっと指輪の件が気になっていたけれど、言い出せないままだった。たかしは妙にはしゃいでワイングラスを倒したり、ナイフを落としたりしていた。
「あぁそうだ、door一緒にダイビングに行かない?」
「えっ、どこ?」
「今回バリ島なんだけど」
「バリは行ったことがないから行ってみたいけど」
「俺ほら夏休み取ってなかったでしょ、休み貯めておいたんだよ」
ダイビングはたかしの唯一の趣味と言って良かった。7.8人の仲間であちこちへ行っているようだった。
「何日ぐらい行くの?」
「1週間ぐらいかな」
「1週間!」
「うん」
「1週間も、海に潜るの?」
「実際には往復の飛行機の時間もあるし、観光もしたいし」
たかしはニコニコしている。よっぽど嬉しいらしい。私はダイビングのライセンスを取り損ねたままだった。
「doorは向こうでライセンスを取れば良いよ、一緒に行こうよ。中川の新しい彼女も向こうでライセンス取るって言ってた。一緒に取れば良いよ。」
「1週間ともなると仕事のこともあるし…」
「大丈夫、大丈夫、何とか都合つけてさ」
私が考えていたのは休みのことではなくて、いったいどんな人たちが来るのかということだった。彼らはたかしと長年の付き合いらしかった。以前の旅行ではみんなカップルで行ったらしい。たかしも前回は女の子と一緒に参加したようだった。
そんな中、私が一緒に行ってその人たちにどんな目で見られるのかと思ったらなんだか行きたくない感じだった。しかも海にはいるわけだからピチピチの女の子たちと並ぶのだ。さすがにそれだけは避けたかった。
「私、耳抜きが何時までたっても上手くできなくて」
「大丈夫だって、簡単だよ」
「ちょっと考えさせて」
「だけどさーみんな彼女連れて来るんだぜ」
「私が行かなかったら、一人はたかしだけ?」
「そんなことはないけどさ」
「とにかく、仕事の都合の付く日程かどうか確認するから」
調整など電話の3.4本でいくらでも可能だった。行く気さえあればどうにでもなるのだ。さりげなく会話しながら、たかしにメンバーの年とそれぞれの連れの年齢を聞きだす。我ながらあざといやり口に辟易しながら、頭の中で女の子たちの平均年齢を計算する。平均年齢は私より10才下だった。一番若くて23才。うーん、微妙…
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