行き違い 1 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

「もうブログは止めるって言ったじゃないか、俺だけを見てくれるって」
「そんなこと言ったって、なかなかうちに来られないじゃない。いま仕事が忙しいのは分るし、そのことで文句を言っているわけじゃないの。だけどあなたの居ない間にみんなとおしゃべりしたり、そういうののどこがいけないのか分らない」
「でも、もう俺の事は書いて欲しくない。自分の生活が誰かに読まれるなんてまっぴらだ」
「だって、誰にも分らないじゃない」
「だとしても、とにかく嫌なんだ。俺が言った変なことがそのまま書かれて、どこかの誰かがそれ読んで笑って。俺はそんなの嫌なんだよ」
「分かった。もうあなたの事は書かない、だけどちょっと経ったらまた始めるかもしれない。他の事を書くなら良いでしょ」
たかしは黙った。秘密の扉はこうして閉じられた。

ブログの世界の流れは早い。日々、いろいろなブログが出来ては、いつの間にか更新されなくなったブログが埋もれて行く。「秘密の扉」を閉じる少し前から彼の部署は急に忙しくなってきた。無理してうちにやってきても、疲れてろくに話しも出来なかった。二人の時間を持つためにやめたのに、これでは止める意味がなかった。それどころか単にオモチャを取り上げられたような、束縛されているような気持ちになった。もっと書きたかった。書きたいことはたくさんあったのだ。

「なんだか下宿人置いているみたいね」
「そういう言い方止めてくれない?」
「ごめん」
朝食の席でつい嫌みを言ってしまう。けれど、8時に家を出る彼の朝食を作るのに6時40分には起きなくてはならない。一人で気侭な生活を送ることに慣れていた私には少し負担だった。簡単にホットケーキとコーヒーというわけにも行かない。以前のように一緒に夕食をとって、ゆっくり過ごせるのならそれでも良かった。けれど、仕事が忙しい時期に同じ部署の人がひとり移動して、さらに長いことやっていたアルバイトの子が辞めて、たかしの仕事量は増えていた。うちに来ても疲れた顔をして少し話をして寝るだけでは下宿人と同じだ。

私たちは付き合い始めてわりと早く半同棲状態になった。たかしは二駅先に住んでいたから、彼にとっては便利だった。着替えのスーツや普段着が何着か運び込まれただけでほとんど生活に支障はなかった。    

彼も悪いと思ったのか、週末以外はだんだん寄り付かなくなって来た。私もその方がなんだか気楽な感じだった。一緒に暮らして行くうちに少しづつ生活パターンのずれが出て来たのだ。私はほとんどテレビを見ない。煩いからだ。コマーシャルになるとボリュームが上がる。落ち着かない。
たかしが、深夜のニュースを見たりしている時にブログをしていた。ものを書いたりする時は、それなりに集中する。たかしがなにか話し掛けて来てもろくな返事もしない。たかしにはそれが不満だった。



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