星4、3 スコセッシ・デニーロのボクサージェイクラモッタについて

1981年
アカデミー賞編集賞、主演男優賞受賞。
監督マーティンスコセッシ。
脚本マティグマーティン、ポールシュレイダー。
予告
昨年劇場鑑賞した「レイジングブル」
「午前十時の映画祭」なにか見終えたあと疲れた感があった。が、今まで 見た中で1番わかれたし、共感共鳴出来た。
そこで昔購入して売却DVDを購入。スコセッシの音声解説がきいてみたかった。
音声解説をきいたけど、やはり並々ならないスコセッシのこだわり、本作を撮るまでの状況が知れた。
本作のよく語られる所に触れながらも、スコセッシ映画のなんたるかを自分なりに書いてみたい。
上記のロバートデニーロが特殊メイクに見えなくもないが、紛れもないロバートデニーロ本人。4カ月かけ20キロ強太ったそうだ。その後痩せるのも大変だったそうだ。
企画持ち込みが、ロバートデニーロだった。
ベルトリッチ「1900年」撮影から本を読みはじめ、ジェイクラモッタに興味をもった。
スコセッシはこの時期「ラストワルツ」や「ウッドストック」の2本の音楽映画を撮影していた。ロバートデニーロに、スコセッシが 体調不良で入院中にお見舞いに来て、説得された。
元々スポーツより音楽が好きなスコセッシは、全く乗り気じゃなかったらしい。が、自信喪失からまずボクシングに興味を持つために、ボクシングを見たり、ボクシング映画を見尽くしたり、脚本を2大朋友のふたりに頼みシナリオを作り、最後はデニーロとスコセッシが島にこもり改変していった。
デニーロは撮影前に1年間もボクシングを行い、原作者のジェイクラモッタも唸るほどの仕上がりだったらしい。1000ラウンドしたとのこと。
いくつものリテイクでデニーロも相当大変だったらしい。が、オスカーを視野にいれていた、いや、本当に演じたかったキャラクターだったから耐えられたのかもしれない。
脚本も原作のエピソードに忠実な所とそうではない所とある模様。
デニーロがラスト収監されるシーン。そのあとの動作は、本当らしい。壁には詰め物がしてあり怪我しないようになっている。
また収監する警察官は本物の警官。よくみると蹴りいれたり、髪引っ張ったり容赦ない。
リハーサルだとおとなしめだったけど、本番のデニーロが凄くてああいうリアクションになったらしい。
共演者は、みな新人。今やオスカー俳優のジョーペシィも俳優を辞め働こうとしていた。
本作の妻役のキャシーモリアーティは、当時10代。演劇を学ぼうとしていた頃、ジョーペシィの紹介でオーディションへ。スコセッシは、堂々していて、声がよく、演技の感がよかった そうだ。

本作公開時、ボクシング映画が流行りで3本ほどあったらしい。白黒映画にしたのは、 マイこるパウエル監督のボクシンググローブの赤みが強い所からだったらしい。時代雰囲気を出すのに低予算で出来たからかもしれない、これは予測だが。
スコセッシ映画、スコセッシ映画とよく言うが、果たして何がスコセッシ映画なんだろう。
自分が好きだという何が魅力なんだろう。昨日音声解説を、きいて憂鬱な気分で考えてみた。
間違いないのは、「男」が描きこまれた男の映画だといえる。本作は、素行の悪さだ。スコセッシ曰く「破滅に近づこうとする」男を描いているところだ。
自暴自棄
喧嘩ぱやい
恋、結婚、不倫、怠惰なんでもあり
思ったら殴ってでも言う
弟、妻、偉い人、 誰でも叩きのめしても言う
モラルハザードで倫理、常識にうとい
粗野で暴力的で言葉悪くて、 怒鳴りつける男達
そういう野郎たちを描き、表現している。
弟のジョーに向かって、 「殴れ」といい、デニーロが殴るとさらに殴らせるあのシーンは、フィクションだ。
スコセッシ、デニーロもラモッタの人間性を認めたうえで、あますとこなく描いている。
男のみじめたらしい所
男のだらしなさ、デニーロの腹、公衆電話のシーンの腹が出てるシーンは、笑うしかないみっともなさ。
男のグチグチ、いじいじ、いばりちらす側面なんかは、見ていてとても嫌になるほどわかってきた。
特典映像に生前ジェイクラモッタ(老人になったラモッタだ)のインタビューがあるのだが、この映画をみた元妻に「俺はこんなか?」と尋ねると「これより、ひどかった」とお褒めの言葉が出たそうだ。それほど別人だったようだ。
弟に何かしたろ!と殴る
それを見つめさせるのだ。悪い事をする男たちを魅せるそれが、スコセッシ映画なのだ。
まるで共感できない男を魅せる映画、それがスコセッシ映画なのだ。本作は、いまだにスタッフでなぜこれを映画化したか理解 出来ない人がいたり、拒絶反応を起こす映画でもあると思う。女性は多分理解に苦しむし、見たくない、嫌いな人物を見つめたくないで事足りる映画だ。
喧嘩シーンは、即興アドリブが多く、ふくらましていくらしい。なのでドラマをもうひとつ足して同時に語る事でリズムを生み出したと編集のセルマスクリーンメイカー。旦那さんは、「赤い靴」のマイケルパウエル監督だ。
ボクシングシーンなのに馬や象の鳴き声をいれた音響さんは、「未知との遭遇」などを手がけた方らしい。何をどういうふうにミックスしたかは、秘密で、そのテープは、仕事終了したら焼却する徹底ぶり。
本当男をみる映画だ。それがスコセッシ映画だ。だらしない男、口答えする男、肉親、女性に手を上げる男、それがスコセッシ映画なのだ。見るに堪えない、共感できない、いやするのも危うい自分の嫌な面を認めさせる力をもった映画なのだ。
さて
スコセッシ監督、主演デニーロの怒る牛、ジェイクラモッタについて
ぜひ!