星5、0 キューブリックのシャイニング。北米版について




1980年原作スティーヴンキング。

脚本ダイアンジョンソン。

脚本監督スタンリーキューブリック。


 キューブリックが多分チェック済みの予告


 キューブリック亡き後の本編散りばめた予告編


私の大好きな映画監督スタンリーキューブリック。

その中でも1番ホラー映画っぽい作品。そしていわゆる付属の話として語られる原作者が気に入らないとされる映画。原作者は天下のホラー作家、スティーヴンキングだ。


「シャイニング」原作本。上下巻。触れ込みは、「史上最強の幽霊屋敷!」読んでみたい!1冊も読んだことない作家。どの作品も長め。



幼少期から知っていたキング。ていうかホラーファンは、いわずもがなの「クリープショー」の草男で知っていた。

キングが本作不満から作り直した「シャイニング」脚本をキングが担当。テレビ放送前提の長い作品。キングは、テレビリメイク要員と化す。映像作品は、テレビにする傾向にシフト。見てみたい。ワーナービデオ発売されてた記憶。



確かはじめは、幽霊ホテルというよりむしろジャックニコルソンこわい!1番怖いのシェリーデュバルじゃん!みたいな感想。

次第にDVDで何度か見直すとキューブリックのモンタージュの素晴らしさに気づきはじめる。
ステディカム映像、サブリミナル幽霊、ラストのチェイス。

時たち廉価DVDの中にいろんなバージョンがある事を知る。〈コンチネンタルバージョン〉、キューブリックの娘さんキャサリンが撮ったメイキングの特典映像つき等々。メイキングを見るために買って売った思い出。動いて演出するキューブリックが見れて嬉しかった。デカかったキューブリック、まるで後期オーソン・ウェルズに見えた。

ジャケットはすべてこんな仕様のワーナーのキューブリックコレクション。存命中は、これ意外に許さなかった気がする。それほど許諾に目を光らせていたキューブリックだった。

キューブリック死後、スピルバーグの「レディプレイヤーズワン」で使用されたり、グッズがドっと発売。ファンには嬉しい!

ブルーレイで購入済み。多分見るの3、4回め。

午前10時の映画祭11で上映されるという事で、令和3年8月。私のキューブリック祭、ティジョイ新潟で見てきた。前から3番目の席かぶりつきでみてきた。


イオンで売ってたシャイニンググッズ。私が着れるデカサイズなし。みんなSかMのみ。
「ギャー」って私が言いたい。買えるサイズ置いてー。

まず、引っかかた事。

この北米版というのが、やっかいで。結論は、あんまり良くない。

 なにせ既存発売されたのは119分。この北米版は143分。23分長くなっている。まあ好きなんでいいのだが、。果たしこの〈北米公開版、4Kリマスター〉が、スタンリーキューブリック演出にどれだけ本意で望んだのか甚だ疑問だった。

まあこのゴゼジュウは、新しいバージョンをやたら見せたがる感じなんだけど、本来の作品意図を尊重するなら通常バージョンを上映して欲しかった。「ワンスアポンアナイムインアメリカ」の特別編集版の鑑賞体験も同様な感慨。


それが見たことないカット満載。が、ひいては、レビューに指摘あったが、間延びしていたように見えた。

物語を補填はしていたが。ホテルは、インディアンの呪いがあるとか、細かい見たことないカットがあった。

あと1番がっくりしたのは、あの酒場に行くといかにも幽霊が腐敗した姿でいるカットがあった。あれはまあわかりやすいけど見たくなかった。ていうかキューブリックが絶対入れないカットで酷く余計だった。見た瞬間「えー」って思っちゃった。

こんなん!キューブリックやらないよ!ベタすぎて、、。という見てて、同じ作品なんだけど、ディレクターズカットではない、他人が入れこんだ不本意なバージョンといわざるを得ないので、私にはノイズにしか見えなくて。みながらせっかく大画面で見れてるのに、、なんかモヤモヤする状況があった。

まあなにわともあれ。冒頭の不穏な空撮ショットから水色のタイトル(下から上へスライドする)


「THE SHIENING」


からひきこまれた。またほぼ内容は忘れていた。見ながら思いだしていた。



前から3列目、かぶりつきで見上げていた。

例のエスカレーターからの血が大量に溢れるシーンでゾワっとした。


この映像が本当素晴らしい。量が半端ない。

エレベーターのシーンは3回撮り直し。1回やると清掃、入れ替えに9日かかり撮ったとのこと。あのシーンが凄いのは、血の量が多くてソファが動いてるのがわかる。予告編からわかる。本編はサブリミナルっぽい使われ方だ。


そしてホテルを走るあのチェイスシーン。必見の疾走感。このチェイスは後半のジャックニコルソンとのチェイスシーンをあおっている。

床のカーペットと床の音が変わる。タイヤがすれる音までわかるステディカムの素晴らしさ。

ホテルの空間を思う存分感じとる映画でもある。カメラ内の画角、焦点、左右対称、ステディカムの滑るような広さ、奥行き、孤立感。
 広い、狭い、怖いをずーっと魅せる映画。メイキングでもレンズ14、16mmを持ってとカメラのレンズサイズを逐一指示していたキューブリック。幼少から青年期の写真家の経験は、役に立ち続ける。


そこにニコルソン一家がくるのだ。


この3人がまた名演技を魅せてくれる映画だ。


父ジャックニコルソン。

酒を断った教師から小説家。書くのに都合が良いとはじめは言っていた。次第に豹変していく。中盤でテニスボールらしき物をおもいっきり室内にぶち当てキャッチボールする姿からジャックのおかしさがはじまる。そしてそこに子供への暴力があった事がノイズのように走る。


必見のラスト。今や伝説かつホラーアイコンになってしまったドアからニコルソン。


この扉破りシーンも何十回もテイクを重ねている。ヴィヴィアンのメイキングにも気分を高めるニコルソンが映し出されている。ブツブツ悪口を言ってテンションを上げていた。

ニコルソンのこの演技を良しとするか悪いとするかは評価の分かれ目。私は大好きな俳優なんで全然良し。
この扉のシーンもよくきいてみるとなにかのお話しを描写しているようで、殺人と全くもってミスマッチな感じ。とても脚本に書いてある台詞を喋ってるようにみえない。
「、、、鼻息でとばしてやろう!、、豚ちゃん」みたいな台詞だ。

ニコルソンが傷つけられる瞬間に痛さすら感じる。そしてスカッとした何かが観客に伝わる。シェリーとニコルソンの階段のやりとりは必見!

迫真の狂ったようなリアクションを魅せるシェリーデュバル。必見!

終盤は泣き叫び、本当に大変そう。メイキングでもかなり辛く演技指導やら動きの指示がされるとこが見れる。実際辛かったと振り返って言っている。「恋人と別れたばっかの仕事だったの、、」とシェリーデュバル。
ロバートアルトマン女優から脇役女優としてしっかりキャリアを登る。
 関係ないけどググッてるとシェリーがテレビに出演して精神疾患で苦しんでる姿が写真にあったが、ちょっとびっくりした。大丈夫かな?!

シャイニングの鍵のコックのおじさん。
子供とシャイニング話をいきなりするおじさん。あなたも結構共犯者ちゃうん?とも。シャイニングの入口であるスキャットマンクローザース。

このスキャットマンさん、なんか見たことあると思ったら「トワイライトゾーン」(劇場版)、「カッコーの巣の上で」と出演されていた。

原作は、もっと幽霊、幽霊していて、庭の迷路やら草木がなんやら当然ながら違うらしい。個人的には素晴らしく映像脚色に成功した作品だと思っている。

子役のダニーロイド。かわいい。
ダニーのひとり喋りから本作のおかしな雰囲気が形づくられる。
ラストの「レッドラーム」のシーンは必見!の変な声。
ダニーさんはその後引退し、今や生物学の大学教教授らしいです。続編の「ドクタースリープ」にカメオ出演されてるそうです。

ラストの迷路シーンのチェイスも必見!
雪は、雪と発砲スチロールを混ぜて撮りあげた。本当に迷路なんで、キューブリックも迷ったそうです。メイキングにも演出風景がちょっとあります、こちらも必見!

 ラストのシーンのハラハラ感は、実に素晴らしい。ステディカムの迫りくる所が良い。


今回の北米版は、20分以上足してあるのが、キューブリックが望んでやってないのと、どれだけ足した場面に演出が及んでいるのか微妙なんで実質星4.3というところなんですが。


やはりキューブリックのシャイニングを劇場で見れたのが大満足。そんじょそこらのホラーではかなわない作品でありました。


特典映像みてて、前作「バリーリンドン」がコケてかなり焦っていたキューブリック。ワーナーからの打診で小説を読んですぐ映画化したというある意味キューブリック低迷期打破の作品だったようです。


ジャックニコルソンの起用は、ポシャた幻の作品、「ナポレオン」で出演依頼していたジャックニコルソンからきているようです。キューブリックの「ナポレオン」も確かに見たかった、それもジャックニコルソンで、、。

きっと西洋偉人ものもう一回「バリーリンドン」あてて、やるつもりだったけど、駄目になったんですね。「バリーリンドン」確かに長い地味で綺麗でちょい残酷な洋風昔話なんで、ヒットしなかったんでしょうか?!


全然関係ないけど、あのステディカムが本当大変そうで。カメラを赤ちゃんの抱っこ紐のように男性の前側に括りつけたような状態で走り回って撮るんですよね。カメラかついで走ってるようなもんで凄いです。メイキングで見たけど。キューブリックだから何十回もカットを重ねます。


ちなみに本作ワンカットに200カット弱かけたとしてギネスブック認定されてます。しかもそのカット採用されず、カットされ無駄になった記録あり。キューブリックあるある。めちゃくちゃカットをリメイクする、納得するまで完成しない、完璧主義、完全主義が出てきます。


一見本作シャイニングって、グロいわけでもないし、わりと不親切なカットワークだし、演技もわりと過剰満載で、万人受けするようなホラー映画には見えない。

 殺人シーン1ヶ所。あとはシャイニングと言われる幻想シーンがいきなり差し挟まれ、親父が大きなホテルで発狂殺人する映画だ。

 ラストのカットもわかい頃のジャックニコルソンが1920年代の写真に載っていて、輪廻転生したの?的カットで映画は終わる。


 迫りくるカメラ、押しよせる血、ホテルであったであろう殺人・呪い、発狂するジャックニコルソン、キューブリックが挟むシャイニングモンタージュをただただ見つめる映画だ。


 名作とは思えないが、独創的にキューブリックが撮りあけたホラー映画として私は大好きな一本だ。また見直していきたい。



さて

キューブリックのシャイニング北米版


ぜひシャイニングファン、キューブリックファンはぜひ!ご覧ください。



追伸

キューブリック「2001年宇宙の旅」も午前十時の映画祭で見たので近日遅延覚悟でレビューします!


こうなるとキューブリック全作品レビューしたくなりますねー。「ドクターストレンジラブ」とか「アイズワイドシャット」(再レビュー)とか。