いやあ、マジうける。 


んで、あいつ、どこいったん?おもったら、トイレでゲエェしてん。よえぇ

 

くすくすくす   


「マッチン!それからどうしたん」ピンクのエクステがゆさゆさゆれてるモッチャンがきいてくる。


そりゃあかわいそうだから、このクソ男が、と思ったけど。


「けどお??」


頭ナデナデしてやったーん、カワイイィつってー。んでまた吐いて


「その情報いらん!マジ」


キャハハハハハ

電車に乾いた笑いが響き合う。 


あいつコーン好きだから、コーンがいっぱい出てきてー


「いやだあああ、だっはハハハ」モッチャンが笑う。ピンク髪をマキマキしながら。


あんね、酔っぱらってぇ、ぼろぼろのやつが、かわぃぅん、すんげえよ、かわいさが、


「でたいつもの、うっせえ!もうそれいらないからうっせえだまれ!」といいながら少しわらうモッチャン。ピンクの髪と黒い髪を指では丹念にわけては、指ではじいたり、いじくったりしている。


マッチンの髪は緑エクステが入っている。アニメのキャラに憧れているようだ。そのキャラと一緒にしたいらしい。


「次は目黒、メグロぉです。お出口は、左側です。」


「くっっさあ!」

ねねねねねねねとモッチャンがマッチンにゆっくりと寄りそい小声でつぶだてる。

「きたあ~、あのデカ山きたきた、、いやぁ人形増えてるふふふふ」


ウケるぅふひひひひひ、もう汗だし、人形も汗まみれだよ。


「かわいそ」

かわいそ


んであんつと、そいからさあ~いったんべぇ、


「どこどこ?路地裏?トイレではやめろよ」


モッチャンは、いつもわたしの言葉にツッコミを素早く入れてくれて大好きだ。わたしの髪の緑とモッチャンピンクを混ぜ合わせたい。まぜまぜにした髪の色に染め上げたい。モッチャンは、わたしのくっさいあの馬鹿夫の話をいつも笑顔できいてくれる。それだけで神だ。

いやネ申なのだ。デカいのだ。わたしのモッチャンは、デカくでピンクなんだ、好きなんだ!


臭い匂いは、青色のスポーツカバンから発してるのか、着ているぐびもとがのびきった長袖から発してるのか、びっちりとした眼鏡から発してるのか、わからない。

青巻軍事は、名前は勇ましいが、ぶつぶつと呟くように話している。

「きののライントークサイコーラ、なおなおなおの声いいいい、なおいい、ふふひぃ、なおライントーサイコらサイコら、、、♪君の振り向く姿はピンクの光線、ヒラッとゆっくりビームが走る、ラブサファイアァーあ~(歌終了)なおなおなおなおなおなおちゃん、ナオティンなおなおティンティン、、、、、」


人形がさんたいぶら下がる青いカバンから黒い液体を取り出しゆっくりとちびちび飲んでしまった。人形は、制服、ゴスロリ、ビキニの姿をした3頭身の人形だ。


青いカバンが揺れて、その青巻の前に座っていたロングコートのか細い女性が、少しだけ、3ミリだけかおをヨコにやり、我慢した。

エナメルの黒いハイヒール、茶色のロングコート、黒縁眼鏡かけていた。女性は、そんな匂いといってもなかなかの匂いでそむけたあと、大きなため息をゆっくりと顔を下にやり、誰にもわからないように吐ききって、意識を妄想に集中していた。目をひたすらつぶり、つぶる。

多くの電車内で人間がやる行為。それは瞳を閉じる、閉眼するだ。

そして彼氏とさっきまでやっていた男の立ち姿を思いうかべた。

あの短い髪、あの匂い。思いだすとたまらなかった。男特有のあのなんともいえないすっぱくさいフェロモン。


わたしのやるかやらないかは、匂いで判別する。

男はすっぱいかすっぱくないかだ。


瞳を閉じて、彼を思う。

瞳を強く閉じて、彼とまぐわう。

瞳を閉じて、くちをしっかりとじて、この酸っぱいひどい臭いを忘れるために。

彼の右手のでっぱった、たくましい骨をひたすら思い続けた。


「山手線うちまわりでえすぅ、、」

鋭い低い声が車内を駆けめぐる。

無機質な男の声がロボットのように、停車駅アナウンスをしていた、、、。