星5つ
相米監督の海の空間と人達

1983年松竹富士提供、原作吉村昭、脚本田中陽造、撮影長沼六男(「最後の忠臣蔵」「おろしや国酔夢譚」)。音楽三枝成章。監督相米慎二。

小泉今日子ことキョンキョンが女優に目覚めたといっても過言ではない、寂しい風の女性を演じ浅野忠信とラブを奏でた素晴らしき相米のラストロードムービー遺作「風花」

画面からはみ出る事が若さだろ!画面から飛んだり跳ねたり動き回るションベンライダー的ティーンのはみ出しを描く世にも忙しい誘拐劇「ションベンライダー」

そして今もなお、そのある種の「若さ」、青春という名の暴力衝動、若いという訳のわからない叫びをこれほど捉えた作品はない、工藤夕貴を世界に出し、相米のエポックメイキングな青い空、オカエリタダイマという暴力「台風クラブ」

ある少女の揺れ動く家族の仲割れた、思い爆発する行動、さまよう少女、祭りの炎と水「お引っ越し」

そんなお気に入りで大好きな映画監督 相米慎二

ワンシーンを長い時間カットをかけずに長く観客に見つめさせる時間空間を提供する長廻しの作家
相米慎二

避けていたわけでわないが、何かすごい重たい感じがずーっとしていた本作、魚、漁師の話、夏目雅子ミーツ緒形拳。松竹DVD鑑賞となりました。

十朱幸代と緒形拳のラブ

夏目雅子と緒形拳の肉親の絆的ラブ

本作の素晴らしすぎるいくつもの長廻しを長い時間凝視して役者の芝居を見つめていると

相米慎二の海の空間に引き込まれていく

ケミカルウォッシュジーンズのような毎回の海空

漁をする緒形拳の形相、引きの映像ではっきりとは、見えないがガチンコでマグロと格闘するその姿の素晴らしさ、息をのむひとさしと吹き出る 血 の鮮烈さ

相米の空間にハナタレだ
漁師の人達

それはどこか言葉少なく
腕一つで荒々しく殴りながら生きてきた緒形拳の漁師の生き様

それは娘に、好きになった女に同等にぶつかっていくラブだった

まるでマグロをつんざくような直線的なぶったたくようなやりのようなラブ

日本アカデミー賞三度受賞している撮影長沼さんの素晴らしい海のショット
全然綺麗に見えない海
本作は人を食う海に見える
そこから必死で馬鹿でかいマグロを重量、水と格闘しながら引き上げるその姿、漁師 緒形拳のなりきりすぎるぶっきっちょうな男かげんの素晴らしき 緒形拳ってやはり素晴らしい仕事をされていたんだなぁと改めて実感。

八十年代の緒形拳は、どれも必見だと個人的に思ってます。

私は十朱幸代さんとのラブは、とっても肉厚肉感的なラブを演じていて素晴らしいラブシーンだと思いました、荒々しく激しく入るラブ 出色なシーンでした、本シーンを見れただけでも素晴らしい
ひかる花火、火花散る人間達

夏目雅子の方言たらずな娘緒形拳との突っつきあうような支えあい、親子あい、
ラスト付近は、腕枕しながらも目頭がアツくなってしまいました。

海の周辺の人達の生き様
別れ、ラブ、がさつでぶつかりまくるラブ

遠くから近くに寄り
また遠くから長く芝居を見つめ続け息を飲む

そんなふうに 相米のフィルムの波に揉まれながら

海に漂い

荒々しいラブに匂い立ち

海の青さを見つめ続けた

音楽三枝さんのオカリナのような音

ラストの素晴らしい原田芳男のデュエット

相米の映像空間に最高の俳優が魅せた水際のラブ

見ながら扇風機の風が不思議と海の匂いを感じさせてくれた錯覚に大袈裟だけど陥ってしまった。

本当に相米監督の映画を見ると映画の時間、長く見つめ、見つめさせるという事の喜びをつくづく感じさせてくれる日本映画監督だと思う、素晴らしい監督だとはっきりと思う。

こんな映画監督素晴らしいと思いっきりいいたい

あなたの作り出した海の人達に僕はとことん酔いしれた

あーあの十朱幸代の女っぷりのリアルさ

強くなまりずぎな色の夏目雅子

佐藤浩市の若さ ファン必見

緒形拳の演技

彼らを繋ぐ相米映像の海の空間


魚の影に格闘しながら揺れ動くラブ

素晴らしい映画でございました、何度もいいますが、
本当に相米監督はやすぎた死 だよなぁ

追伸斉藤由貴の「雪の断章」も見てみたいと思います。