ギター ソウル/ビリー バトラー | Doodlin' Records

Doodlin' Records

神戸元町のバー「Doodlin'」店主がチョイスするジャズレコード紹介。
勝手気ままに書かせていただきます。

プレステッジは音楽性だけをとっても、ブルーノートと何かにつけて比べられるのは無理もない。創設時期も近いし、共にモダンジャズからソウルジャズの名盤を量産したのだから、この2社は正にライバル同士とみてもいいだろう。おまけに録音の多くを担当したのがルディ ヴァン ゲルダーであるのまで被る。

最も違う点も多い。例えばブルーノートはハードバップから、新主流派と呼ばれた当時音楽的に尖っていた若者達。さらにはフリージャズまでを網羅しているのに対し、プレステッジはより黒人大衆にアピールするオルガン路線を特に強く押し進めた。

そういった違いが最も極端に表れたのが、両者が扱ったギタリストの数だ。ブルーノートはオーナーのアルフレッド ライオンが気に入ったプレイヤーをとことん使うというのが特徴である。そしてギタリストに関しては50年代はほぼケニー バレル。60年代になればグラント グリーンの独占状態になる。ジョージ ベンソンやジミー ポンダー、ジェームズ ブラッドウルマーが登場するのはライオンの引退間際か引退後、しかもリーダー作は作っていない。

対して、プレステッジの方は60年代になってからでもグラント グリーン、ビル ジェニングス、ジョージ ベンソン、ヴィンセント カラオ、メルヴィン スパークス、ブーガルー ジョー ジョーンズとかなりの数にのぼる。オルガンと共にソウルミュージック、ポップス、ロックといったより大衆好みの音を演出できるギターをかなり重要視した結果だろう。またライオンがオーナーとプロデュースを兼ねていたブルーノートと違い、当時プレステッジの雇われ(?)プロデューサーであったボブ ポーターのたてた方針でもあったのだろう。

さて、今回の主役であるビリー バトラーは60年代中期からメルヴィン スパークスと共に、そんなプレステッジに最も頻繁に出入りしたギタリストだ。そしてメルヴィンと同じく一聴して彼とわかる強烈な個性と技を持っている。
僕はギターを弾かないので、あまりギターに関する知識がないため、その奏法の特徴を詳しくここで説明出来ないけれど、このビリー バトラーの何でも弾きこなす才能にはジャズだけにとらわれない天才的な幅の広さを感じる。

紹介する「ギター ソウル」は1969年9月22日に録音された、恐らくバトラーのリーダー第2弾。セルダン パウエルやソニー フィリップスといった芸達者を迎えて全7曲、それはもうギターで表現出来るありとあらゆるスタイルの音楽をここで披露している。
例えば今でも斬新に聴こえるディストーション(?)をきかせた前衛的ファンク「ブロウ フォー クロッシング」で幕を開けたかと思えば2曲目の「ゴールデン イヤリング」ではガットギターでかなりスパニッシュ的要素の濃い面を見せる。さらに当時のプレステッジの見本の様なジャズファンク「ザ サンブ」。お馴染みのナンバーでありながら、他とは全く違うノリを聴かせる「ホンキートンク」ときて、ベースギターというのを使用した「B&B カリプソ」は文字通り南の風を感じさせる。この他にもありとあらゆる要素が本作には詰まっていて、それらが全く違和感を抱くこと無く並んでいるうえ、おまけに誰が聴いても最上級に上手い!。これが1969年でなく、ワールドミュージックというカテゴリーが確立している現代に現れていれば、かなりの人達に衝撃を持って迎えられるだろうに。

残念ながらビリー バトラーはスイングジャーナルの「新 世界ジャズ人名事典」には掲載されていない。これを書くにあたりインターネットで調べてみたが、運悪くロイアルズからアスレチックスに移った大打者であるビリー バトラーと、シカゴのR&Bシンガーで今年亡くなったビリー バトラーばかりが出てきて諦めてしまった。そのくらい今では忘れられているのが天才ギタリストのビリー バトラーだ。

プレステッジのバトラーは、本作の9ヶ月前に「ディス イズ ビリー バトラー」を録音している。そのジャケットではパイプをくわえてギターを弾くバトラーの姿が見れるのであるが、それはやはり前に紹介したオルガンのドン パターソンと同じで、所謂僕らがイメージする普通のアメリカ黒人ではない。恐らくスペインあたりの血が多く入っているのだろう。本作で聴けるガットギターのあまりもの上手さはこの血によるものであるのは想像出来る。そしてこれこそが普通に出ているジャズ入門書に載っている名盤よりも、より他民族国家でありとあらゆる人種が混在している素のアメリカを感じさせる要素だ。
この時代のプレステッジのアルバムは、日本では当時からあまり評価されていなかった。しかし、このプレステッジこそジャズを通した生のアメリカを捉えた随一のレーヴェルであり、中でもビリー バトラーがその代表であると思う。