高校二年生の夏、私は初めて甲子園球場で高校野球を見た。

それは昭和62年(1987年)。

その日私は始発電車に乗り込み、大阪駅へ向かった。

その途中で私の乗った電車をある団体専用列車が追い越していった。

その団体列車には第一試合で登場する浦和学院高校(埼玉県)の応援団一行が乗っていた。

追い越し際に「浦和の鈴木宜しく!」みたいな紙を私に見せたり、私に手を振ったりと応援団の人達は随分元気そうに見えた。

そうこうしている内に私は大阪駅に着き、阪神電車に乗り換えて甲子園へ向かった。

到着したら午前七時ごろと随分早かった。

何気なしに一塁側アルプス席の一番上に座ろうとしたら、第一試合で浦和学院と対戦する尽誠学園高校(香川県)の応援団旗を持った生徒が既に陣取っていた。

「尽誠学園の応援宜しくお願いします」と言われた私は素直に「分かりました」と答えた。

近くにいる人に「尽誠学園に良い選手いますか?」と聞くと「伊良部投手は球が速いよ」と答えてくれた。

私はこの人が答えてくれた伊良部投手と団体専用列車で紙を見せられた浦和学院の鈴木選手に注目しながら第一試合「浦和学院VS尽誠学園」を見ていた。

結果は尽誠学園の勝利だったがそれ以上に鈴木(浦和学院)・伊良部(尽誠学園)という超高校級の2人の選手を生で見ることが出来たのが私にとっては何よりの収穫だった。

その年の秋のドラフトで鈴木健(浦和学院)は西武に、伊良部秀輝(尽誠学園)はロッテに、夫々高校生ながら一位指名されたのである。

私は「自分が初めて生で見た高校野球の試合からドラフト一位指名を受ける選手が2人も出るなんて・・」と嬉しくなった。

この年の夏に優勝したのは立浪和義(現中日)、橋本清(元巨人・ダイエー)、野村弘(元大洋・横浜)、片岡篤史(元日本ハム・阪神)、宮本慎也(現ヤクルト)等を擁したPL学園。

PLは見事春夏連覇を果たしたのであった。