昨年の4月に、コロナワクチンに関し、周囲の人との考え方のズレを感じた記事をアップしたが、また自分がズレているのか疑問に思うようなことがあった。
それは、同僚二人とオンライン会議をした時のことだった。
同僚A(女性)と同僚B(男性)は、製薬業界で長年医薬品開発に携わってきたエキスパートだが、Aの方はその時、ブースターを2回(つまり合計4回接種)打っていたにもかかわらず、COVID-19の抗原検査に陽性反応が出て療養中だった。
同僚A:月曜日に陽性反応が出ちゃって…。口の中が変な味がするけど、COVIDのせいなのか抗ウイルス薬のせいなのかはわかりません。嗅覚はだいぶ戻ったかも。でも、呼吸が苦しくなったりはしなくて、喉で止まってる感じです。
同僚B:ああ、それ、オミクロンだね。上気道が集中的にやられるらしい。
私:PCR検査を受けたのですか?
同僚A:いいえ、抗原検査ですよ。日曜日、母のところに行こうと思って検査した時には、症状もなくて、陰性だったんです。でも、月曜日、何だか体調が悪いなと思って、検査したら、陽性になっていたんです。
同僚B:この間の出張でもらっちゃったかな?
同僚A:2回目のブースターを打ったのが、今から二週間前。出張に行く4日前だったのですよ。
私:4月にFDAが発表したワクチンの有効性データ見ました?
同僚B:見たよ。
私:あのデータ見ると、2回接種後、3か月ぐらいで殆ど有効性はゼロになって、7か月も経てば逆にマイナスになってましたよね。
同僚A:でも、症状が出てしまうのを抑える効果はなくても、ワクチンはそれでも有効だと思いますよ。重症化率は下げてるみたいだから。陽性率は下がらなくても入院率は下がっていたんですよね?
私:うーん、どうでしょう。実は、私一度も打ってないんですよね。
同僚B:えーっ、それって、すごく気を付けないとまずいんじゃないの?
私:今のところ、パンデミックが始まって以来、一度も風邪ひいたことすらありませんけど。
同僚B:どぅるがーさん、君が一度もワクチン打ってなかったなんて、知らなかったよ。ほんと、気をつけなきゃ。
同僚A:私は5回でも打ちますよ。
私は、AとBのような医薬品開発のエキスパートが、Aが2回ブースターを打っても感染したにもかかわらず、いまだに盲目的にワクチンの効果を信じていることに驚いた。
(どう見ても、オミクロン株に対する有効性は、2回目接種後7か月でマイナス、つまり打った方が罹りやすいということになっている。)
ここで、医薬品の臨床開発のプロセスについて、私が実際にアメリカで見てきた体験を交えて説明しようと思う(長文かつ専門的になるので、興味のない方は読み飛ばしてください)。
まず、これは多くの人が知っていると思うが、承認前の試験には、大きく分けて、非臨床、第1相、第2相、第3相の段階が存在する。
非臨床とは人間を使わない試験で、生きた動物を使わないIn Vitro(試験管内)と生きた動物を使うIn Vivo(生体内)がある。
動物の致死率や腫瘍の発生などは見てわかるが、人間の言葉を話さない動物が苦痛を訴えているかどうかを判断する際には、体を何回くねらせるか、どんな鳴き声を何回あげるかなどが指標として用いられる。
無事非臨床で安全性が確認できた薬は、臨床試験で人間に投与されるようになるわけだが、まず第1相では、健康な被験者に治験薬を投与して、安全性や薬の体内での動態(血中濃度の推移など)を確認する。
ここで大切なのは被験者が「健康」であることで、年齢、BMI、基礎疾患、他に飲んでいる薬、妊娠や授乳などを確認し、条件をクリアした者だけが選ばれる。
言い換えれば、痩せすぎていたり太りすぎていたり、あるいは基礎疾患があったり、妊娠していたりする場合の安全性は確認できないことになる。
第1相を無事クリアすれば、次に第2相に進むわけだが、ここでは、少数の患者に投与して、病気の治療に必要な投与量を決定したり、あるいは治療の方針を決めたりする。
よく用いられるのは、プラセボ(偽薬)を用いた比較試験である。
実薬とプラセボどちらを投与されているかを医師や患者が知ってしまっていては、先入観によるバイアスができてしまうため、ここでは医師や患者にはどちらが投与されたかを秘密にする、いわゆる「二重盲検」という手法が取られる。
試験の期間や患者数は、プラセボとの間に有意な差が見られそうな数値を予測して計算して決めるのだが、ここでもできる限りノイズの少ないきれいなデータが得られるよう、年齢、BMI、基礎疾患などの条件を設定して患者を選定する。
それでもこの段階で、プラセボとの間に差が出なかったりなど、躓くことは多々あるため、それを解決するために企業はあらゆる努力をする。
薬自体を作り替えたり、用量を増やしたり減らしたりなども考えられるが、薬自体はそのままでも、データの解析法や試験のデザインを工夫したり、体形や基礎疾患や併用薬が試験に影響を及ぼすような患者を除外したり、あるいは試験を実施する医療機関を変えたりするだけでも、結果が違ってくることがある。
そして、それでうまくいけば、いよいよ大人数での第3相試験に突入するわけだが、ここでも第2相で行ったように、きれいなデータが出る条件に合った患者の選定および試験のデザインを行う。
もちろん、企業としても、無駄な出費は最低限に抑えて、なるべく早く承認を得たいわけだから、試験期間は、有効性や安全性が確認できる最低の期間に限定される。
それでプラセボとの間にはっきりとした差が見られれば、FDAや厚労省などの規制当局にデータを提出して、いよいよ審査に入る。
審査期間中には、当局が実際に製造工場を訪れ、工程を細かく確認するわけだが、清掃状態が悪くて異物混入の危険性があったり、製造記録を怠っていたりなどの不具合が見つかった場合、期限内に改善策を講じなければ、製造差し止めになる。
審査はその医薬品のリスクとベネフィットを天秤にかけて行われるわけだが、ここでいうベネフィットとは、必ずしも薬の有効性のみではなく、最終的に承認されるかどうかは、政治的経済的ベネフィットも含めて、審査機関が有用だと思うかどうかにかかっている。
第1相、第2相、第3相というと、三つの試験を行えば承認が得られるように見えるかもしれないが、実際は各相を何度も繰り返しつつ、全ての試験が終了して有効性と安全性が証明されるまでには長い年月を要するのだ。
しかし、めでたく承認されたとしても、これで終わりではない。
上記の通り、臨床試験はなるべく必要最低限の期間で、条件を絞り込んだ被験者のみで行うため、実際に世に出て、あらゆる年齢層や基礎疾患を持った患者に長期間にわたって使用されることになると、新たな問題が出てくることが多々あるのだ。
そこで、企業は市販後も医療機関にアンケートを行ったり、或いは患者や医療関係者からの副作用の自発報告を募ったりして、定期的に当局に連絡することを義務付けられている。
それで、一度承認されはしても、使用する条件を限定されたり、最悪の場合承認取り消しになる場合も少なくない。
これを踏まえたうえで、長年この業界に勤務してきたAやBが、数か月の臨床試験のみで緊急使用許可を得られたワクチンに対して、何の疑問も持たないのが、私には理解できない。
さすがにデータ改ざんなどの詐欺は行っていないと信じたいが、もしかしたら人為的にあの手この手を尽くしてプラセボとの差が出るようにして得られたデータなのではないか?長期に使用して新たな問題は出てこないのか?などとは考えなかったのだろうか?
しかし、逆に言えば、AやBのようなエキスパートが信頼するということは、信頼することの方が当たり前なのだろうか?
日本のSNSを見ると、「海外ではもう誰もマスクをしていない」「未だに行動制限をしているのは日本だけだ」などというコメントも目に付くが、実は決してそんなことはない。
アメリカでも、一部のサービスでは、サービス提供を接種済みの客に限定して、未接種者はリモート限定にしたりなどの規制が未だに行われている。
しかし、私の考えが少数派なのだとしたら、辛抱強くパンデミックが終息するまで待つしかないだろう。
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