他県に住む古くからの友M夫人、

数年前から杖のいるご主人の介護を家でされていた。

なかなか会うことにならずこ無沙汰が続いていた。

 

久しぶりにLINEで伺ったところ、電話をかけてきた。

 

90代に入られたご主人、容態は良くならず、

医師から施設に入ることを勧められる程、手助けが要るようになったという。

が、ご主人はどうしても家がいいと言われ、

介護士の手を借りながら自宅のベッドで毎日を過ごしておられるという。

 

M夫人曰く、いくら助けがあっても辛い、自分が倒れそうな時がある。

まさに老老介護なんよ。と。

 

しかしご主人から平素は聞いたことのない言葉が、最近になって、言い出されたという。

”あんたがこうして居てくれるから生きとれる。ありがとうよ。“と何度も言葉にされるという。

 

毎日辛い思いが募るなかで、

今まで聞いたことのない、ありがとう の言葉を初めて言われると、

いくら辛い思いをしても、私が頑張らなくてはと、

崩れそうな気力に力がわいてくると言う。

 

Mさん ご主人は優しい方、

特に男性は妻に対しては言い出しにくい言葉なのよ。

人間的にも立派な方じゃあないの、心から感謝されておられると思います。

無理しないで出来るだけ傍に居てあげて。と言ってあげながら、

妻にありがとうが言えるご主人のお人柄にも、ただ頭が下がる思いがした。

 

”また電話するから聞いてね“ のM夫人からの電話の言葉に、

少しでも二人が楽になったよ、という話が聞ける日を待つことにした。

 

“ありがとう” の言葉は、人を勇気づけ、心を動かす力を持っている。