1. Money Jungle
(Duke Ellington)
2. Fleurette Africaine (African Flower)
(Duke Ellington)
3. Very Special
(Duke Ellington)
4. Warm Valley
(Duke Ellington)
5. Wig Wise
(Duke Ellington)
6. Caravan
(Juan Tizol/Duke Ellington/Irving Mills)
7. Solitude
(Duke Ellington/Eddie DeLange/Irving Mills)

Duke Ellington – piano
Charles Mingus – bass
Max Roach – drums

Sep. 17, 1962

 

今では考えられないことだが、
50年くらい前のアメリカでは、
アメリカ以外の音楽も人々の耳に届き、
幾つもの優れたミュージシャン、レコードが、
しかるべき評価を受けていた。

1957年、Martin DennyのExoticaという
アルバムがヒットして、文字通りエキゾチカを標榜。
同じ年にはHarry BelafonteのBanana Boat Song
ヒットして、その突然降ってわいたような
ラテン音楽ブームは、日本にも波及したほど。

そしてMiles DavisのKind of Blue
Ornette ColemanのThe Shape of Jazz to Come
リリースされた1959年には、
『黒いオルフェ』が公開されて、Antonio Carlos Jobimの
音楽が世界中に広まったし、
63年には坂本九の「上を向いて歩こう」が
アメリカで1位になる快挙を達成した。

そういう流れの中で、例えばマイルスでさえ、
スペイン音楽を題材にしたレコードを作ったし、
Bud Shankは62年にRavi Shankarと共演、
Duke Ellingtonも67年にThe Far East Suiteという
エキゾチカなレコードを作っていた。

The Beatlesは突然インド音楽を採り入れたのではなく、
周囲がそうした状況だったから、むしろ自然な流れとして、
やったまでだった。

 

Duke Ellingtonが1927年から4年間出演していた
『コットン・クラブ』で成し遂げたこと‥
それは「ジャングル・サウンド」と呼ばれた
エキゾチカなダンス音楽で、
やがて有名なBlack and Tan FantasyCaraven
Black, Brown and Beigeに結実するのだし、
40年代にDizzy Gillespieはアフロ・キューバン・ジャズに
取り組みだして、キューバのコンガ奏者Chano Pozoを
バンドに入れて、2人で作ったMantecaは
ディズの代表曲の1つになった。
ディズが、ジャズだけでなく、あらゆる音楽の可能性、
領域を広げたのだった。

 

Money Jungle Money Jungle
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「ここではないどこか」の音楽を夢想していた
Duke Ellingtonにとって、国境や人種、民族、
時空を超えることはごく自然なことであり、
時には勝手知らぬ外部のミュージシャンと
演奏することだって厭わない。

1961年、Duke Ellingtonは、Roulette Recordsにて
Louis Armstrongと歴史的なレコーディングをし、
これはThe Great Summitというアルバムに結実し、
その直後にはColumbia Recordsにて、
Count Basieのバンドとも共演している。
また先を急ぐが、62年にはJohn Coltraneと、
翌年にはColeman Hawkins、Stephane Grappelli、
更にはスウェーデンの歌手、Alice Babsともレコーディングと、
80年代のマイルスのように節操がない。

その中でも特筆すべきは、
Charles Mingus、Max Roachとのトリオで吹き込んだ
Money Jungleだ。
のっけからミンガスのベースがブンブン唸り、
それに負けじとエリントンが過激な
ストライド・ピアノで迎え撃つ冒頭曲。
傍目にはおかしなおっさん同士が殴り合いをしてるようだが、
2人の間ではちゃんと会話が成立している。
それを繋ぐローチの正確無比なシンバル・プレイの美しいこと。

エキゾチカなFleurette Africaine
このアルバムのために書かれたものだが、
アフリカ的な要素は1つもなく、
かつてザ・ピーナッツも歌ったSidney Bechetの
Petite Fleurに近い。
そしてまた過激なVery Specialと、
もっぱら急→緩→急‥という構成になっていて、
最後のCaraven、Solitude2連発へなだれ込む。

このアルバムは、ローチが1960年に発表した
We Insist!からの延長線にあって、
ミンガスは元より、ローチも当時は
ブラックパワーとしてのジャズを標榜していた。

いわゆる“ジャズ”を期待してエリントンを聴くと、
大いに戸惑うわけですが、それはミンガスにもいえることで、
そんな2人がいるなんて、それだけで大事件。
でもこれが難解かといわれれば、そんなこともなく、
むしろエリントンとミンガスが仲良く
「こんにちは~」と普通のジャズをやっている。
多くのリスナーを戸惑わせたのは、そこなのではないか。