1. Can't We Be Friends?
(Paul James/Kay Swift)
2. Isn't This a Lovely Day?
(Irving Berlin)
3. Moonlight in Vermont
(John Blackburn/Karl Suessdorf)
4. They Can't Take That Away from Me
(George Gershwin/Ira Gershwin)
5. Under a Blanket of Blue
(Jerry Livingston/Al J. Neiburg/Marty Symes)
6. Tenderly
(Walter Gross/Jack Lawrence) 
7. A Foggy Day
(George Gershwin/Ira Gershwin)
8. Stars Fell on Alabama
(Mitchell Parish/Frank Perkins)
9. Cheek to Cheek
(Irving Berlin)
10. The Nearness of You
(Hoagy Carmichael/Ned Washington)
11. April in Paris
(Vernon Duke/Yip Harburg)

Originally Released Aug. 16, 1956
Produced by Norman Granz

 

まだ戦争の記憶が生々しく残っていた1952年4月、
Gene Krupaのトリオが来日して、
日本に本格的なジャズのブームが巻き起こる。
クレージーキャッツのハナ肇も、
『嵐を呼ぶ男』の石原裕次郎も、
クルーパー来日なくしてはあり得ない。

 

そして翌年11月には、Verve Recordsの創設者、
Norman Granzのジャズ・アット・ザ・フィルハーモニックが
奇跡の来日を果し、本物のジャズとは何ぞやというのを
日本人に見せつけた。

1944年にNat King Coleを中心として、
当時のオールスター・ミュージシャンが勢揃いして、
ロサンゼルスで初めて開催された
ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニックは、
当初こそDizzy Gillespie、Charlie Parker、
Lester Young、Les Paulと、若いミュージシャンも
積極的に参加していたものの、やがてビバップは
そこから排除され、更にスターとなったナット・コールも
おいそれと呼べなくなった1953年には、
すっかり時代遅れで、見どころに欠ける一座になり果てていた。

とはいえ、メンバーには前年に来日したGene Krupaを始め、
Roy EldridgeにBenny Carter、Ben Webster、Oscar Peterson、
Ray Brown、J.C. Heard、そして何よりも歌手の
Ella Fitzgeraldが一座に加わってるとあっては、
"本物"を見たことのなかった日本人には、
身に余る体験だった。
Oscar Petersonといえば、Bill Evansとともに、
日本での人気は世界でも群を抜いているわけですが、
それはこの時のJATP来日の記憶が刷り込まれてるからなんですね。

 

更に12月にはLouis Armstrong & His All Starsも来日。
62年のThe Ventures来日以前では、
日本のポピュラー音楽史で最も重要な出来事が、
1952~53年に立て続けにあったことは触れておきたい。

余談ながら、JATPがただの見世物興行に堕したところに、
George Weinのニューポート・ジャズ・フェスティヴァルが
現れた。
最先端のジャズに飢えていた音楽ファンの隙間を埋めたんだ。

 

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1,350円
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本作は、Oscar Petersonのカルテットをバックに、
Ella FitzgeraldとLouis Armstrongがお馴染みの
スタンダード・ナンバーを歌いまくる、
ジャズ・ヴォーカルの名盤中の名盤。

エラ以下の顔ぶれはJATPのメンバーで、
その一座の中にサッチモがひょっこり遊びに来て、
ついでに歌も歌っちゃいました、というのが
このアルバムの趣旨で、なるほどサッチモにはどこか、
フラッと来てマイクの前に立ったようなところがある。

 

冒頭のCan't We Be Friends?
Oscar Petersonが短いイントロを紡いで、
エラが歌いだす。
このアルバムはどの曲もこのパターンで、
5曲目あたりでちょっと飽きてくるが、
自分の歌のバックでピアノを弾いているのが
Oscar Petersonだなんて、ションベン漏らすほど
贅沢なシチュエーションではないか。

 

1956年といえば、このElla and Louis
全てにおいて対極にあるChet Baker Sings
リリースされた年でもありますが、
何かの作業をしながら、横で鳴っていても
ちっとも邪魔にならないのがElla and Louis
いちいち聞き入ってしまって仕事にならないのが
Chet Baker Singsですね。