1. World Gone Wrong
(trad. arr. Bob Dylan)
2. Love Henry
(trad. arr. Bob Dylan)
3. Ragged & Dirty
(trad. arr. Bob Dylan)
4. Blood in My Eyes
(trad. arr. Bob Dylan)
5. Broke Down Engine
(Blind Willie McTell)
6. Delia
(trad. arr. Bob Dylan)
7. Stack A Lee
(trad. arr. Frank Hutchison)
8. Two Soldiers
(trad. arr. Bob Dylan)
9. Jack-A-Roe
(trad. arr. Bob Dylan)
10. Lone Pilgrim
(Benjamin Franklin White/Adger M. Pace)

Originally Released Oct. 26, 1993
Produced by Bob Dylan

21世紀に入って、Bob Dylanがまた面白い。
20世紀最後のアルバムTime Out of Mindからこっち、
現時点での最新アルバムRough and Rowdy Waysまで、
まるで空疎な80年代を葬り去るように、
充実したアルバムを続出している。

実際、ディランにとって80年代は、空疎だった。
コンスタントに作品は出すものの、金と人を費やした割には、
それがどうしたというアルバムばかりで、
これに付き合うほうも、この時代は我慢を強いられてきた。

ミレニアムが秒読み段階になった90年代、
ディランは一旦、自分をリセットしたんだ。
ギター片手にニューヨークへやってきた頃の自分を取り戻すために、
弾き語りによるフォークやブルースのカヴァ集に、
2年に渡って取り組んだのだ。

 

World Gone Wrong World Gone Wrong
 
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93年リリースの本作も、前作Good as I Been to You同様、
アコギとハーモニカ弾き語りによるトラディショナルな
フォークやブルースのカヴァ集となった。
Bob Dylanは、90年代の前半にそれだけをやっていたことになる。
ディランの歌の巧さは今更言うまでもないし、
卓越したギター・ワークも楽しませてくれる。

そのディランの歌とギターを通じて、まず彼が
リアルタイムでこれまで通過したロックンロールから、
遠くバロック時代のチェンバロやオルガンまで、
一気に遡ってゆける。