1. You Wanna Ramble
(Herman Parker, Jr.)
2. They Killed Him 
(Kris Kristofferson)
3. Driftin' Too Far from Shore 
(Bob Dylan)
4. Precious Memories
(trad. arr. Bob Dylan)
5. Maybe Someday
(Bob Dylan)
6. Brownsville Girl 
(Bob Dylan/Sam Shepard)
7. Got My Mind Made Up 
(Bob Dylan/Tom Petty)
8. Under Your Spell
(Bob Dylan/Carole Bayer Sager)

Originally Released July 14. 1986
Produced by Bob Dylan

まるで小松崎茂のイラストみたいだが、
これが立派なBob Dylanのアルバム。

前作Empire Burlesqueをリリースした後、
ディランはTom Petty & The Heartbreakersとツアーに出、
86年3月には2度目の来日を果した。
Empire BurlesqueでThe Heartbreakersの
メンバーと共演し、彼らとならかつてのThe Bandのような
有機的なチームワークが組めると踏んだのかもしれない。

 

 

しかしツアー直後に製作された本作は、そのツアー、
或いはThe Heartbreakersとの共演による熱気が、
まるでなかったことのように処理され、
聊か焦点の定まらないものになった。
船頭多くして船山に登るとはこのこと。

アルバムはカヴァ2曲が冒頭を飾り、自作曲がそれに続くが、
後半は、Tom PettyにCarole Bayer Sager、
そしてSam Shepardと共作した楽曲で構成されている。

Sam Shepardといえば、Wim Wendersの『パリ、テキサス』の
脚本を手掛けたことでも知られる俳優だが、
そういう耳で聴くと、11分に及ぶBrownsville Girlは、
どこか『パリ、テキサス』している。
ドラマチックなテーマから、歌うというより、
長台詞を喋っている風なのである。

 

2017年10月2日、Tom Pettyは心臓発作により、
自宅のあるサンタモニカで急死した。
ディランにとっては、本作での共演は元より、
1988年、George Harrisonの呼びかけで
結成された覆面バンド、The Traveling Wilburysの
メンバーでもあって、いわば盟友2人を
失ったことになる。