1. Tight Connection to My Heart 
(Has Anybody Seen My Love)
(Bob Dylan)
2. Seeing the Real You at Last
(Bob Dylan)
3. I'll Remember You
(Bob Dylan)
4. Clean Cut Kid
(Bob Dylan)
5. Never Gonna Be the Same Again
(Bob Dylan)
6. Trust Yourself
(Bob Dylan)
7. Emotionally Yours
(Bob Dylan)
8. When the Night Comes Falling from the Sky
(Bob Dylan)
9. Something's Burning, Baby
(Bob Dylan)
10. Dark Eyes
(Bob Dylan)

Originally Released June 10. 1985
Produced by Bob Dylan

The BugglesのVideo Killed the Radio Star放映によって、
1981年8月に開局したMTV。
翌年、Michael Jacksonは宇宙一売れたレコード
Thrillerを発表。
Billie JeanBeat It、そしてタイトル曲の
ミュージック・ビデオが製作され、MTVで繰り返し放映された。

そして1983年、Herbie Hancockはヒップホップの要素を
採り入れたアルバムFuture Shockを発表し、
そのオープニング曲Rockitでは、
プロモーション・ビデオが作られた。
真上から映した鍵盤にハンコックが指を滑らせる映像は、
その音楽がヒップホップなのかどうかという以前に、
カッコいいビジュアルとして、強烈なインパクトを与えた。

それらが転機となって、大物ミュージシャンまでも、
MTVとミュージック・ビデオの存在を無視できなくなった。
ミュージック・ビデオとはちょっと異なるが、
当時Miles Davisもビジュアル志向を強めていて、
76年のTDKを皮切りに、ホンダのバイクや
三楽(現メルシャン)の焼酎のCMにまで出ていた。

 

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1985年、本作のリリースを目前に控えたBob Dylanは、
密かに東京にやってきて、Tight Connection to My Heartのために、
都内でミュージック・ビデオの撮影を行った。

女優の倍賞美津子さんが起用されて、まるで
ムード歌謡のカラオケビデオのようだったし、
山下達郎のライヴ盤でも有名な「ピットイン」での
演奏シーン(あろうことか振付で)やら、
どこか田村正和を思わせるディランの風貌やら、
ツッコミどころが満載であった。

アルバム自体は、Sly & Robbieのリズム・セクションを
軸に、曲によって様々なゲストやスタジオ・ミュージシャンを
投入していくもので、前作Infidelsの路線を
引き継いでいるが、ゲストやスタジオ・ミュージシャンが
肉付けされ過ぎていて、基本線がぼやけてしまっている。
これは、大きいことはいいことだという、80年代のロックの
流行を、ディランも無批判に導入したということなのか。

Tight Connection to My HeartのPVが
ムード歌謡のカラオケビデオみたいだというのは、
我ながら言いえて妙で、このアルバムは、
ディラン流ブラコンの体なのである。

85年といえば、悪夢のWe Are the World
そして『ライブ・エイド』があった年で、
ディランも双方に参加した。
Keith Richards、Ron Woodとともに登壇したディランは、
「風に吹かれて」なんかを歌ったが、「みすぼらしい」と酷評され、
プロデューサーのBob Geldofにも「場違いだ」と言われていた。
出てくれとお願いしといて、ふざけた言い草だ。