1. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band 
(John Lennon/Paul McCartney)
2. With a Little Help From My Friend 
(John Lennon/Paul McCartney)
3. Lucy in the Sky with the Diamonds 
(John Lennon/Paul McCartney)
4. Getting Better 
(John Lennon/Paul McCartney)
5. Fixing a Hole 
(John Lennon/Paul McCartney)
6. She's Leaving Home 
(John Lennon/Paul McCartney)
7. Being for the Benefit of the Mr. Kite 
(John Lennon/Paul McCartney)
8. Within You Without You 
(George Harrison)
9. When I'm Sixty-four 
(John Lennon/Paul McCartney)
10. Lovely Rita 
(John Lennon/Paul McCartney)
11. Good Morning, Good Morning 
(John Lennon/Paul McCartney)
12. Sgt. Pepepr's Lonely Hearts Club Band (Reprise) 
(John Lennon/Paul McCartney)
13. A Day in the Life 
(John Lennon/Paul McCartney)

Originally Released June 1, 1967
Produced by George Martin

The Beatlesは、完全再現不可能なアルバムを
3枚作り上げている。
1つは、『キャヴァーン・クラブ』で日頃やっていた
ライヴをそのままスタジオに持ち込み、
The Beatles誕生の瞬間と空気をそのまま封じ込めた
デビュー・アルバムPlease Please Me
もう1つは、「サマー・オブ・ラヴ」もしくは
「マジック・サマー」と呼ばれた
1967年の空気をそのままパッケージにした、
このSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
そして更に、「ウッドストック・イヤー」の1969年の空気と、
The Beatles8年間の集大成を閉じ込めたAbbey Roadである。

なぜ再現不可能か?
それは、The Beatlesのメンバーの半分が
もうこの世にいないからではない。
例えJohn LennonとGeorge Harrisonが生きていても、
それぞれの時代の空気まで再現するのは不可能だからだ。
もしやるとすれば、別のPlease Please Meや、
別のSgt. Pepper's、Abbey Roadを作り上げるしかない。

The BeatlesがSgt. Pepper'sの方針を固めた時、
同じアビイ・ロード・スタジオではPink Floydが、
デビュー・シングルArnold Layneと、
アルバムThe Piper at the Gates of Dawn
レコーディングに取り掛かっていた。

John LennonもPaul McCartneyも
この風変わりなコンセプトのバンドにすっかりのめり込み、
殊にJohn LennonはWhat's the New Mary Janeをやったり、
Barbet Schroederの映画『モア』のサウンドトラックみたいに、
Across the Universeに小鳥の声を入れたりしていた。

そして運よく歴史的アルバム誕生の
瞬間に居合わせたRoger Watersは、
8年後にShine On You Crazy Diamondという大作でもって、
The BeatlesとSgt. Pepper'sをトリビュートしたのである。

 

 

The Beatlesの金字塔。
このアルバムは、The Beatlesにしては珍しく
完全主義的なアプローチで作られたものだ。
元々は彼らが過したリヴァプールの日常や幼い頃の想い出を
盛り込んだアルバムを作るつもりでいたが、
ペッパー軍曹のThe Lonely Hearts Club Bandによる
ライヴ・コンサートという架空の設定に大きく方針転換した。

1967年は夢物語なのである。
そこへ入ったら、現実社会と切り離される、
遊園地や、サーカスのテントの中。
そこに存在した空気、そこで過ごした人々の感情や言葉、
食べた物や着る物、歩き方に寝方、犬や猫の鳴き声‥
Sgt. Pepper'sにはそういったものが全て封じ込められ、
1967年を過ごした者の聖典として屹立している。

だから当初のアルバムの企画に沿って作られた
Penny Lane/Strawberry Fields Foreverはここから切り離された。
その2曲と同じ時期に作られたWhen I'm Sixty-fourは、
捨てるには惜しいし、アルバムの内容にも意外と合ってたんで、
アルバムに残しておくことにした。

アルバムのテーマを大きく方針転換したのは、
67年になってすぐにJohn Lennonが
A Day in the Lifeを持ち込んだからだ。
この時代を超越した、壮大なテーマを持った曲が現れた時、
架空のバンドによるコンサートという設定にして、
クライマックスへどう持っていくかという
落としどころを考えたのである。

曲はまず、John Lennonによるアコギの弾き語りで始まる。
アコギの弾き語りから、ピアノが加わって、
John Lennonが歌いだす瞬間。ここがまずたまらん。
そしてベースとドラムがぬっと現す。
Ringo Starrは、例えこの曲だけしかプレイしていなくっても、
ロック史に燦然と輝く名ドラマーになっていただろう。

「今朝新聞を読んでいたら、車でトラックに追突して
死んだ男の記事が出ていたけど、
誰もそいつが上院議員だって気付かなかった」と、
落語の枕のようなことを言う。

そして「映画館へ行ったら、イギリス軍が勝利したという
戦争映画を上映していたんだけど、客がえらく少なかった。
でも僕は見続けた、その戦いの本をよく知ってるからね。

君をブッ飛ばしてやりたいよ」

ここでいう戦争映画とは、1967年にJohn Lennonが出演した
『僕の戦争』という映画と、その原作本のことだ。

「今朝新聞を読んだら、ランカシャー州のブラックバーンで
穴が4000個も開いていた。
その小さな穴をみんなで数えて、しかもそいつが
ロイヤル・アルバート・ホールを満たすのに
どれだけ要るかも必要らしいってさ

君をブッ飛ばしてやりたいよ」

そしてこれらの中間部には、Paul McCartneyが以前書いていた、
短いピアノ曲がメドレーで繋げられている。
毎朝のいつもの出来事から空想に耽るという話。

曲は、あの壮大なエンディング‥
John Lennon言うところの
「ゼロから始めて、世界の終わりのような音」という
抽象的なリクエストに見事なアレンジメントで応えた、
George Martinのオーケストレーションでクライマックスを迎える。
で、メンバー全員で叩いたピアノとオーケストラの残響音が、
40秒近くも鳴り続く。
John Lennonの言うとおり、この曲にはブッ飛ばされた。

とにかく一つ一つの音、歌、アイディアやコンセプトの豊富さ、
ここに封じ込められた空気‥全てが破格のスケール。
それを可能にしたのは、時代のニーズに鋭く反応できる、
The Beatlesという怪物バンドの類まれな嗅覚あってのことです。