1. Drive My Car 
(John Lennon/Paul McCartney) 
2. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) 
(John Lennon/Paul McCartney) 
3. You Won't See Me 
(John Lennon/Paul McCartney) 
4. Nowhere Man 
(John Lennon/Paul McCartney) 
5. Think for Yourself 
(George Harrison) 
6. The Word 
(John Lennon/Paul McCartney) 
7. Michelle 
(John Lennon/Paul McCartney) 
8. What Goes On 
(John Lennon/Paul McCartney/Richard Starkey) 
9. Girl 
(John Lennon/Paul McCartney) 
10. I'm Looking Through You 
(John Lennon/Paul McCartney) 
11. In My Life 
(John Lennon/Paul McCartney) 
12. Wait 
(John Lennon/Paul McCartney) 
13. If I Needed Someone 
(George Harrison) 
14. Run for Your Life 
(John Lennon/Paul McCartney) 

Originally Released Dec. 3, 1965
Produced by George Martin 

The Beatles第二章開幕。
ジャケットに施された写真からロゴまで、
何もかもが歪んでいる。
この時絶賛公開中の『HELP! 四人はアイドル』で
散々走り回ってる4人が、ここでは誰一人笑っていない。

本作は、The Beatlesが大きな転換期に入ったことを示す重要作。
The Beach BoysのBrian Wilsonは、
本作を聴いてPet Soundsを作る
きっかけになったといわれている。
しかしアメリカでリリースされたものは、
前作Help!からのナンバーを追加した独自編集版。
それを聴いてPet Sounds

そのThe Beach Boysはこの年にToday!を発表しており、
それに対するThe Beatlesの返答がRevolverです。
こうしたThe Beach BoysとThe Beatlesの関係は、
1967年にBrian WilsonがSMiLEのリリースを
断念するまで続きます。

ズンズンと重いブンブン・ベースから始まるDrive My Car
"beep, beep, beep, bepp, yeah!"がなんともご機嫌。
「さぁこれからRubber Soulを聴くぞ!」という
気合にぴったりな出だしです。
これは、The Beatlesによる唯一のホットロッド・ソングですね。

この前年、Brian Wilsonがプロデュースした
Jan & DeanのDead Man's Curveが大ヒットしてますが、
スタジオに持ち込んだスティングレイのエンジン音を録音していた。
(The Beach Boysの409で既にやってる方法)
それをPaul McCartneyはベースでやってんですね。
これを何でシングルにしなかったのか、不思議だ。

George Harrisonがシタールを使ってレコーディングした
Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
女の家に泊まった。朝になったら彼女は仕事に出かけ、
自分だけ部屋に残ったというだけの歌詞だが、
冷ややかな孤独感が素晴らしいメロディにのって、
淡々と伝わってくる。
こうしたひどく醒めた歌詞が本作の特徴であり、
I'm a LoserHelp!で度々吐露してきたことを、
John Lennonはほんとに冷ややかに歌うのだ。

ロサンゼルスにあるColumbia Recordsのスタジオにいた
The Byrdsは、隣の部屋でレコーディングしていた
Ravi Shankarの音を聴き、George Harrisonに紹介した。
インド音楽、或いはRavi Shankarと、George Harrisonの
付合いは、この時に始まったわけですね。

もっとも、ロックにシタールを初めて使ったのは
The Beatlesではない。
同じ1965年にリリースされたThe Yardbidsのシングル
Heart Full of Soulにシタールが使われたヴァージョンがあり、
これがロックにシタールが使われた最初のケース。
で、Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
The Rolling StonesのPaint it Black‥と、
70年代初頭のマイルスすら巻き込むほどの大流行になった。
確かにロックでシタールを最初に使ったのはThe Yardbirdsだが、
そこにGeorge Harrison、或いはThe Beatlesが参入しなければ、
微風にすらならなかったわけです。
そして欧米以外の音楽に目を向けさせるチャンネルを開けたのが、
George Harrisonなんですね。

The Beach BoysみたいなPaul McCartney作の
You Won't See Me
ここではまだ彼は仮面を被っている。
これがシングルになってもよかったが、
We Can Work It Outという凄い曲が出来てしまった。

A面のハイライトが、John LennonによるNowhere Manだ。
松本隆さんの「微熱少年」という小説に、
「The BeatlesのNowhere Manって
どういう意味か知ってるか」という会話が出てくる。
「NowhereはNow hereってことで、
つまり"今ここにいる"という意味なんだ。
これがJohn Lennonの凄いところなんだよ」と。

「The Beatlesの登場でそれまでに
何もなかったのと同じになった」とは
Keith Richardsの名言だけども、
The Beatlesが全てを切り開き、
ある地点に到達して待っていた。
そのThe Beatlesが切り開いた道を、
アメリカやイギリス、日本からも続々と辿っていったわけだ。

George HarrisonによるThink for Yourself
リヴァーヴを利かせたギターのリフは、
シタールに触れたことから出てきた音だ。

ホレたハレたのラヴソングから離れ、
その向こうにImagineが見えるThe Word
「その言葉を言えば、君は自由になる。
その言葉を言えば、僕のようになれるさ。
‥‥
その言葉は、Love」。
フラワー・ムーヴメントのピークは
"サマー・オブ・ラブ"といわれた1967年ですが、
The ByrdsがMr. Tambourine Manを歌い、
The Lovin' SpoonfulがDo You Believe In Magic
デビューした1965年に、その始まりがあったんですね。

そしてA面の最後で、遂にPaul McCartneyが仮面を脱ぐ。
といっても、まだ少し遠慮してる段階だが。
Michelleだ。
Yesterdayではストリングス・カルテットを導入していましたが、
ここでは4本のギターとベース、ドラムだけで構成。
曲は2/4拍子で淡々と進むが、
最後のヴァースでテンポをやや落として、ギター1本になる。
George Harrisonが洒落たギター・ソロをつけてますが、
その同じフレーズが最後にもう一度出てきて、
フェードアウトしていく。

 

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Ringo Starrの名前が初めて作曲者クレジットに入った
What Goes On
原型は、John LennonがThe Quarrymen時代に書いたもので、
ミドルエイトがうまくゆかずに放っておいた。
その後Paul McCartneyがミドルエイトのメロディを書き、
Ringo Starrが歌詞を足して、曲を完成させた。
で、その歌詞を完成させたRingo Starrが、
この曲を歌ってるというわけ。

途中の息継ぎがマリファナを連想させると
一部で噂になったGirl
Paul McCartneyによるMichelle
フレンチの要素を感じさせるけど、
Girlのほうは、John Lennonによれば、
ローマ・カトリック教会のミサにヒントを得たとのこと。
やっぱりホレたハレたの歌じゃないんだ。
Michelleはギター・ソロでフェイドアウトしていきますが、
こちらではシタールでチェンバロみたいな音を出していますね。

何だか暗くなってしまうGirl
その後の無駄に明るいI'm Looking Through Youに救われる。

B面のハイライトが、僕の好きなIn My Lifeだ。
2年後に出たシングルPenny Lane/Strawberry Fields Forever
コンセプトの原型でもありますね。

メロディの素晴らしさ、サウンドの素晴らしさ、歌詞の素晴らしさ、
そして何よりJohn Lennonという天性の歌手の素晴らしさ。
ホレたハレただけのラブソングから前へ進んだ、
このRubber Soulというアルバムを名盤にした名曲です。

メロディをフェイクするGeorge Harrisonのイントロから、
これが名曲であることを証明している。
そのギター・ソロは度々出てきて、センチメンタルの極致をゆく。
そしてGeorge Martinによる、チェンバロ風のエレピのソロが、
より一層メランコリックな気分にさせる。
溜め込んだ感情を一気に解放する、
最後のJohn Lennonのファルセット。
ただの甘っちょろいバラードとは訳が違う。

前作Help!の収録から漏れたWait
これが前作に収録されなかったのは、分かる。
他の曲と比べて、テーマが重い。
Help!をやりながら、意識の一部はもう
Rubber Soulにいっていたわけだ。

Roger McGuinnにRavi Shankarを
紹介されたGeorge Harrisonは、
そのThe Byrds風のナンバーを歌っている。
If I Needed Someoneだ。
The ByrdsのThe Bells of Rhymney
Roger McGuinnがプレイしたリフがベースになっている。

そしてクロージングは、Elvis PresleyのBaby, Let's Play House
ヒントを得たというRun for Your Life
John Lennonはこの曲を忌み嫌っていましたが、
Rubber Soulを聴いてゆくうちに
段々気が重くなってきたところを、
この抜けのいい曲で一気に救ってくれます。

これと同じ日にNorwegian Wood (This Bird Has Flown)
第一回レコーディングも行われていたのに、
ここでは半年前に逆戻りしている。
Norwegian Wood (This Bird Has Flown)を完成させられず、
「ええいっ!」って感じで作ったんだと思う。
つまりこの時の4人も、気が重くなっていたんですね。
John Lennonがこの曲を歌ってくれて、
本当に気が晴れたと思う。

翌1966年にThe Beatlesは来日している。
その時点での最新アルバムは勿論
このRubber Soulだけど、
その記者会見で「最近バラードが増えてきましたが」と
間抜けな質問をした記者がいたそうな。
まだ日本にロックとか、アルバム作りなんてものが
全くなかった時代の、微笑ましいエピソードですが、
本作は、単なるバラード集を越えた、
重いコンセプトのトータル・アルバムになっている。