1. You Need a Mess of Help to Stand Alone 
(Brian Wilson/Jack Rieley)
2. Here She Comes 
(Ricky Fataar/Blondie Chaplin)
3. He Come Down 
(Al Jardine/Brian Wilson/Mike Love)
4. Marcella 
(Brian Wilson/Tandyn Almer/Jack Rieley)
5. Hold On Dear Brother
(Ricky Fataar/Blondie Chaplin)
6. Make It Good 
(Dennis Wilson/Daryl Dragon)
7. All This Is That 
(Al Jardine/Carl Wilson/Mike Love)
8. Cuddle Up
(Dennis Wilson/Daryl Dragon)

Originally Released May 15, 1972
Produced by The Beach Boys

例えばGeorge HarrisonとRingo Starrが、
Todd Rundgren辺りを誘って、
「今日からこのメンバーがThe Beatlesです」と言って、
納得する人はいないだろう。
Let It BeのBilly Prestonがどれだけ
素晴らしい演奏をしたといっても、
ただのゲストだから、呑み込めたわけです。

1972年にリリースされたこのThe Beach Boysのアルバム。
Carl Wilson主導で作られ、南アフリカ出身の
Blondie ChaplinとRicky Fataarが正規メンバーに加わった。
現在のThe Rolling StonesにおけるChuck Leavell、
Darryl Jonesの貢献度は認めるけれども、
そこはかとなく感じる居心地の悪さに通ずるものがある。

しかしストーンズのケースがそれでも呑み込めてるのは、
Billy Preston同様、あくまでサポートだからだ。
Brian Wilsonの存在感が薄い上に、65年以来、
ライヴにアルバムにと貢献してきたBruce Johnstonが
バンドを抜け、そこにどこの馬の骨とも分からぬ奴が、
「今日からメンバーです」とやって来て、
「ハイ、分かりました」とはなかなか言えない。

 

 

ここで断っておかねばならないのは、
Blondie ChaplinとRicky Fataarは共に
立派なミュージシャンだということ。
ただ、Paul RodgersやAdam Lambertが如何に優れた
シンガーだからといって、彼らがいるQueenを
Queenとするのは違うだろうということと同じである。

それと本作でブライアンの存在が薄いのは、
The Beach Boysそっちのけで、
"アメリカのあみん"American Springの
デビュー・アルバム制作に掛かりきりだったから。

American Springは60年代のガール・グループ、
The Honeysを継承したもので、
ブライアンの当時のカミさん、Marilyn Wilsonが
妹のDiane Rovellと組んだデュオだ。
1972年にリリースされたアルバムSpringには、
Dennis WilsonとBruce Johnston以外の
The Beach Boysのメンバーが全員参加、
カールには悪いが、そちらの方が遥かにThe Beach Boysらしい。

Blondie ChaplinとRicky Fataarが如何に
立派なミュージシャンであるかは、
彼ら2人で書いたHere She Comes、Hold On Dear Brother
証明している。
急に余所行きの、The Beach Boys仕様の音楽をやらなかったのは
エラいですね。
デニスはデニスで、Captain & Tennilleの
Daryl Dragonを抱き込んで、これまた
自分の音楽をやっている。

そこで4曲目のMarcellaだ。
幾度もブライアンの存在感は薄いと述べたが、
この曲のブライアンは黒子に徹しているにも拘わらず、
ブライアン以外の何物でもない。
しかもPet Sounds以前の懐かしい匂いが漂っている。