1. Will You Still Be Mine?
(Matt Dennis/Tom Adair)
2. I See Your Face Before Me
(Arthur Schwartz/Howard Dietz)
3. I Didn't
(Miles Davis)
4. A Gal in Calico
(Arthur Schwartz/Leo Robin)
5. A Night in Tunisia
(Dizzy Gillespie/Frank Paparelli)
6. Green Haze
(Miles Davis)
Miles Davis - trumpet
Red Garland - piano
Oscar Pettiford - bass
Philly Joe Jones - drums
June 7, 1955
運命の1955年がやってきた。
この年は2つの出来事があった。
1つは、Charlie Parkerの死だ。
バードは1955年3月12日に、ニューヨークの5番街と
東81丁目にあるアパートメント・ホテル、スタンホープ・ホテルの
ニカ男爵夫人の部屋でテレビの『ドーシー・ブラザーズ・ショー』を
見ている間に激しく咳き込み、他界した。
大葉性肺炎と穿孔性十二指腸潰瘍の合併症、
更に肝硬変と心臓病も患っていたということだ。
マイルスはその情報を、ライカーズ島の刑務所の中で聞いた。
彼はニューヨークへ出てくる前からEileen Barthと事実婚をし、
この時点で3人の子供がいたが、「養育費を払え」と訴えられて、
刑務所にぶち込まれていたというわけ。
前作からこのアルバムまで半年も間が空いているのは、
そのせいだ。
そして1955年といえば、Columbia Recordsと契約した年である。
レーベルはマイルスにレギュラー・グループの必要性を説き、
あのファースト・クインテットを結成することになる。
マイルスは54年にPrestige Recordsと3年間の
専属契約を取り交わしていたが、その契約期間中に
大手のColumbia Recordsへ移籍したのである。
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このアルバムをレコーディングした1955年6月7日の時点で、
マイルスはレギュラー・グループの必要性に
自覚的だったとは言い難いけど、
自分が求めているサウンドについてははっきりしていた。
このアルバムを端緒にAhmad Jamalのレパートリーを
何度か取り上げ、バンド全体をジャマル的なものへ導いていく。
そしてベースのOscar Pettiford以外は、
その後のクインテットのメンバーが顔を揃えている。
ベースがPaul Chambersに代り、
サックスにJohn Coltraneが加わって、それは始動する。
この中でWill You Still Be Mine?とA Gal in Calicoは、
1951年にAhmad JamalがOkeh Recordsで録音した
The Three Stringsに収録されていたもの。
因みに同アルバムには、Ahmad's Bluesや
Surrey with the Fringe on Top、Billy Boyと、
その後マイルスがクインテットで取り上げる曲も収録されている。
アルバムは全曲ワンホーン・カルテット。
一切の無駄を省き、空間を活かしたサウンドになっている。
イントロなしから始まるWill You Still Be Mine?。
新しい風が吹いている。最初の一音から、これまでにない
新鮮な風に包まれている。
そしてこれまでの演奏との相違は、息苦しさがないところ。
アップテンポなWill You Still Be Mine?から一転、バラードへ。
Red Garlandがブロック・コードで絶妙のお膳立てをし、
マイルスがミュートで入ってくる。
サックスが入ったらこの典雅なムードはおじゃんである。
軽快、そしてチャーミングなA Gal in Calicoは、
そんなマイルスのアレンジ・ワークの真骨頂と言える。
Red Garlandがやはりブロック・コードでイントロを弾き、
マイルスがミュートで入ってくる。
同じ軽快なWill You Still Be Mine?ではオープンだったが、
A Gal in Calicoではミュートに変えているところにも注目したい。
大体、これまでのマイルスの演奏には、“チャーミング”という
形容は当てはまらなかったし、この演奏の先には、
Someday My Prince Will Comeが、Human Natureがある。
静から動、動から静へのメリハリ、
全ての演奏についてミュージシャン任せにせず、
マイルスのアレンジメントが加わっていることに注目したい。