1. Maggie's Farm
(Bob Dylan)
2. One Too Many Mornings
(Bob Dylan)
3. Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again
(Bob Dylan)
4. Oh, Sister
(Bob Dylan/Jacques Levy)
5. Lay Lady Lay
(Bob Dylan)
6. Shelter from the Storm
(Bob Dylan)
7. You're a Big Girl Now
(Bob Dylan)
8. I Threw It All Away
(Bob Dylan)
9. Idiot Wind
(Bob Dylan)

Originally Released Sep. 13, 1976
Produced by Don DeVito and Bob Dylan

1973年6月、Miles Davisは9年ぶり2度目の
来日を果し、東京と大阪でコンサートを行った。
今はなき新宿厚生年金でのライヴを、
後日NHKがテレビ放映したことを知った僕は、
10年ほど前に、それを放送してくれないかと、
要望してみた。
その時はけんもほろろに突っぱねられたが、
2011年になって、突然それが放送された。

ここで重要なのは、40何年ぶりにそのライヴが
放送されたことではなく、40年前にマイルスのライヴが
テレビで放送される日常があったということだ。
1966年にThe Beatlesが武道館でライヴをやった時、
当時独占放送権を得ていた日本テレビが、
これを放送した。
今はPaul McCartneyがライヴをやったという話が、
テレビや新聞で短く紹介される程度である。

キャンディーズの解散コンサートや
山口百恵の引退コンサート、
松田聖子の初の武道館コンサートも、
テレビで観られた時代があった。
 

Hard Rain Hard Rain
 
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1975年に"ローリング・サンダー・レビュー"という
コンサート・ツアーを開始したBob Dylanは、
76年に入って第2弾に打って出、Hard Rain
題された本作の模様は、テレビ収録もされた。
翌年、一部曲目変更という形で、日本でも放送され、
ガロの歌に出てくる人でしかなかった"動くディラン"を、
多くの日本人が初めて目撃したのである。
次は目の前で見たいと思うのは当然のことで、
78年の武道館ライヴに結実するのだ。

音楽を聴くという日常的な行為の中に
ハレの要素が含有し、音楽が単なる風景ではなかった
時代を象徴する出来事ではないか。

"ローリング・サンダー・レビュー"そのものは、
第1期にしろ2期にしろ、殆ど固定メンバーで、
そこからT-Bone BurnettとDavid Mansfield、
そしてMick Ronsonを抜いた顔ぶれが、
76年のアルバムDesireに結集した。 

"ザ・アメリカ"なT・ボーン、マンスフィールドらに、
異分子Mick Ronsonがいるのが、このバンドの胆だ。
つまりイギリスの血が入っているわけだね。

Chuck Berry風リフから始まるMaggie's Farm
歌が始まると、往年のThe Beach Boysみたいな
瞬間も出てくる。足りないのはBrian Wilsonの
ファルセットだけである。

オリジナルではギター1本で弾き語りされていた
One Too Many Morningsは、ディランの唐突な歌いだしから、
カッコいいロック・バラードで演奏されていく。
割とオリジナルに忠実な「メンフィス・ブルース・アゲイン」は、
シャウトしまくっている分、長い歌詞を端折って歌われているが、
そこがまたカッコいい。

レコーディングしたばかりのOh, Sisterは、
この曲をライヴでどうやったらいいのかが
まだ定まっていなかった。
Scarlet Riveraのフラフラしたバイオリンが、
それを物語っている。
名曲Lay Lady Lay、しかし始まってすぐの
コーラスを聴くと、まるでアルフィーみたい。
テンポが遅すぎる。

せっかくのLay Lady Ladyが散々な演奏だっただけに、
Blood On The Tracksからの3曲には救われる。
この2曲とラストのIdiot Windが本作のハイライトだ。
I Threw It All Awayよ、お前は何故そこにいる)