1. Slip On Through 
(Dennis Wilson)
2. This Whole World
(Brian Wilson)
3. Add Some Music to Your Day
(Brian Wilson/Joe Knott/Mike Love)
4. Got to Know the Woman
(Dennis Wilson)
5. Deirdre 
(Bruce Johnston/Brian Wilson)
6. It's About Time 
(Dennis Wilson/Bob Burchman/Al Jardine)
7. Tears in the Morning
(Bruce Johnston)
8. All I Wanna Do 
(Brian Wilson/Mike Love)
9. Forever 
(Dennis Wilson/Gregg Jakobson)
10. Our Sweet Love 
(Brian Wilson/Carl Wilson/Al Jardine)
11. At My Window 
(Brian Wilson/Al Jardine)
12. Cool, Cool Water
(Brian Wilson/Mike Love)

Originally Released Aug. 31, 1970
Produced by The Beach Boys

1970年代以降に生まれた者にとっての
The Beatlesの扉が『赤盤/青盤』だとするなら、
The Beach Boysのそれは、1974年にリリースされた
ベスト盤Endless Summerだろう。

しかしその扉は、これからThe Beatlesを聴こうという
人にとっては何ら差支えのないものだったが、
The Beach Boysの場合、Endless Summerは、
入口であると同時に出口にもなりかねなかった。

The Beach Boysは1969年に、ワーナー傘下の
Reprise Recordsへ移籍。
70年に発表されたこのSunflower以降、
70年代を通じて、同レーベルから出していくことになる。

古巣Capitol Recordsは、まるで粗大ゴミを処分するかのように、
2枚組のベスト盤Endless Summerを74年に出した。
そのタイトルと選曲は、Pet Sounds以降の音源を黙殺、
あくまでもカリフォルニアの海と太陽という、
バンドがとっくの昔に捨て去ったステレオ・タイプのイメージを、
なおも押し付けるものだった。

キャピトルはまさか売れるはずがないと思っていたが、
Endless Summerは2枚組であったにもかかわらず、
全米1位を獲得し、驚異的な売上を記録した。
人気がないと思い込んでいたThe Beach Boysが、
実はThe BeatlesやThe Rolling Stonesと並ぶ
スーパー・バンドであったことをレーベルに思い知らせたが、
時既に遅し。

またEndless SummerでThe Beach Boysを知った人は、
その2枚組に記録されたイメージと、当時リアルタイムで
進行していたアルバムやライヴのそれとの間に、
大きなジレンマを抱いたことは想像に難くない。

翌75年5月、愛奴、デビュー・アルバムを発売。
アルバムには浜田省吾がThe Beach Boysを
パロディ化した「二人の夏」が入っていた。

 

 

バンドとしてはレコード会社が変って心機一転、
キャピトルで出来なかったことを思う存分
試してみようという気概が、このアルバムから窺える。

1曲目はDennis WilsonのThe Beatles風ロック・ナンバー。
後のKokomoを思わせるメロディも楽しい。

ロックでコンガを大々的に取り入れたのはSantanaで、
オラトゥンジのJingoをカヴァした
1969年のデビュー盤は、その後マイルスにも
影響を及ぼしたほどだが、そのSantanaを好んでいたのか、
このアルバムでデニスが関わった曲には、コンガが使われている。
そしてどういうわけか、どの曲もせかせかしている。

だが意識は、続くブライアン2連発に向かう。
This Whole Worldは一見普通のロックンロールだが、
様々な異なった要素が短い中に押し込まれ、
3曲目の美しいAdd Some Music to Your Dayのお膳立てを作る。
アルバム前半は、これを聴くためにある。

続く4曲目のデニスは軽く流して、
6人目のBB5の面目躍如‥Bruce JohnstonのDeirdre
そして7曲目Tears in the Morningは、
ブライアンの仕事ぶりを一番冷静に見てきたからこその、
美しいナンバー。
The Beach Boysのことはこの際忘れて、
この2人で何か一緒にやってほしかった。

ジョンストンのTears in the Morningから、
続くブライアンのAll I Wanna Doという件は、
かつてのToday!B面に匹敵する美しさ。
Foreverもよくできているだけに、
A面のデニス関連をもっと作り込んでいれば、
本作は第2のToday!になる可能性を秘めていた。

Our Sweet Loveからのブライアン3連発‥
SMiLE素材のCool, Cool Waterも含め、
アルバムの前半と後半で、全く別のバンドの音楽のよう。