1. Help! 
(John Lennon/Paul McCartney) 
2. The Night Before 
(John Lennon/Paul McCartney) 
3. You've Got to Hide Your Love Away 
(John Lennon/Paul McCartney) 
4. I Need You 
(George Harrison) 
5. Another Girl 
(John Lennon/Paul McCartney) 
6. You're Going to Lose That Girl 
(John Lennon/Paul McCartney) 
7. Ticket to Ride 
(John Lennon/Paul McCartney) 
8. Act Naturally 
(Vonie Morrison/Johnny Russell) 
9. It's Only Love 
(John Lennon/Paul McCartney) 
10. You Like Me Too Much 
(George Harrison) 
11. Tell Me What You See 
(John Lennon/Paul McCartney) 
12. I've Just Seen a Face 
(John Lennon/Paul McCartney) 
13. Yesterday 
(John Lennon/Paul McCartney) 
14. Dizzy Miss Lizzy 
(Larry Williams) 

Originally Released Aug. 6, 1965
Produced by George Martin 

拝啓、Mr. John Lennon。
僕は、このアルバムに収録されてる
It's Only Loveという曲が好きです。
あなたは常々この曲を忌み嫌っていましたが、
このアルバムには不思議と合っていて、
軽視するには勿体ないと思うのです。

そりゃ、Paul McCartneyがYesterdayを持ってきたのに、
自分はまだこんなところにいるのかと
お嘆きになったことでしょうが、
あなたの良さは、そのこんなところなのです。

そうそう、It's Only Love同様に嫌っていた、
次のアルバムにあるRun for Your Lifeも、
僕は好きですよ。

というわけで、本作は、
『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』に続く
2作目の映画『HELP! 四人はアイドル』を
モチーフとしたアルバムです。
即ちA Hard Day's Nightがそうだったように、
このアルバムも、1~7が映画の挿入歌、
残る半分がこのアルバムのためにレコーディングされたもの。

The Beatlesで最も有名なナンバー、
音楽の教科書にさえ載る
名曲Yesterdayを収録してる点でも、
同作は注目を集めている。

またこのアルバムでは、セカンド・アルバム以来、
George Harrisonが2曲も書いている。
さしたる成果もなかった前回に比べ、
ここでは確実に進歩を見せている。
他のバンドならもっと書いてただろうに、
目の前に天才が2人もいるのでは、
出る幕ないのは致し方ない。
いや、その2人に出逢わなければ、
自分で曲を書こうなんて思わなかったかもしれない。

「おいっす!!」の歌いだしで
John Lennonがザクザクとアコギでリフを刻み、
この時の心情を吐露したタイトル曲。
そういうものすら呑みこみ、アイドル映画の主題歌として
機能してしまうところに、The Beatlesというバンド、
或いはその現象の特異性がある。
これを始めてしまったJohn Lennonですら、
この事態をどうすることも出来ない。
なんとかしてくれ、ヘルプ!
その答えを出すのに、5年も掛かった。

そんな重たい歌詞とキャッチーなメロディが
不思議とマッチしたHelp!に続いて、
Paul McCartneyによる呑気なThe Night Before

続くYou've Got to Hide Your Love Awayは、
定説では、Bob Dylanの影響によるものといわれている。
ジョンはディランの物まねで歌っているし。
始めは"I can't go on, feeling two foot tall"
という歌詞にしていたが、ポールに聴かせる時に
どういうわけか、"two foot small"と歌ってしまい、
そのままにしたそうな。

因みにこれは、イギリスの4人組フォーク・グループ、
The Silkieのために書かれた曲で、
レコードはThe Beatlesがプロデュースしている。
The Silkieは、アメリカのPeter, Paul & Maryのような
グループで、つまり女の子の歌手が入ってるんだ。
曲の最後を、The Beatlesはフルートで
フェイドアウトしていきますが、
The Silkieの方はコーラスで終る。
五つの赤い風船の「遠い世界に」みたいです。

さて、続くYou're Going to Lose That Girlは、
このアルバムで最も好きな曲。
イントロなしから"ユゴナ・ルーザッガー"と入ってくるところ、
何度聞いてもゾクゾクしますね。

そしてこれは、次のTicket to Rideとセット。
3枚目のアルバムでの冒頭2曲同様、
名コンビぶりを発揮しています。
A Hard Day's NightI Should Have Known Better
魅力が強靭なギター・リフだとしたら、
You're Going to Lose That GirlTicket to Rideは、
Ringo Starrのパワー・ドラムから音を積み上げた、
サウンドの塊そのもの。
Help!を夏のレコードだとするのは、
これら名コンビ2曲にあります。

 

 

Ringo Starrが歌うカントリー・ミュージックから始まる
B面は、このアルバムのためにレコーディングされたもの。
The Beatlesのライヴの主要レパートリーにもなって、
あのシェイ・スタジアムのコンサートでも歌われた。
球場コンサートでカントリーを演奏したのは、
勿論The Beatlesが初。
オリジナルはBuck Owensのレコードで、
後に2人はこの歌で共演もしている。

そしてJohn Lennonが常々忌み嫌っていたIt's Only Love
しかし冒頭でも述べたように、僕はこの曲が好き。
あえてこの曲だけを聴こうとは思わないけど、
この夏の雰囲気を持ったアルバムにはよく合っている。

もう一つのGeorge Harrison作‥You Like Me Too Muchは、
導入部が凝っている。
George MartinとPaul McCartneyが連弾でピアノを弾き、
更にJohn Lennonのエレピでゴスペル風のムードを作り、
後はアコースティックとエレキ‥2つのピアノを中心に、
サウンドをまとめ上げていく。
George Harrisonのギター・ソロの後ろで鳴る
アコースティック・ピアノがホンキー・トンク風なのと、
ほぼ全編に出てくるJohn Lennonのバッキングが、
Filles de KilimanjaroのChick Coreaみたい。

You're Going to Lose That GirlTicket to Ride
A面の名コンビとするなら、
You Like Me Too MuchTell Me What You See
B面の名コンビ。
凝りに凝ったイントロをどうするのかと思った
You Like Me Too Muchは、
その後大した展開も見せなかった。
これでこのレコードが終ったら出落ちになるところだが、
次にTell Me What You Seeが始まって、
救われた気持になるわけです。

1965年6月14日、The Beatlesは3曲レコーディングした。
I'm DownI've Just Seen a Face
そしてYesterdayだ。
前の2曲‥特にI've Just Seen a Faceは、
Paul McCartneyにとっては名曲を吹き込む前の肩慣らしだ。
3本のアコースティック・ギターが共演するが、
導入部のGeorge Harrisonのソロが洒落てる。

そして2曲をレコーディングした後、
Paul McCartneyは一人スタジオに残って、
Yesterdayを吹き込んだ。

この曲、音楽の教科書にも載るほどで、
一時期はThe BeatlesといえばYesterdayという
風潮がまかり通っていた。
曲自体は文句のつけようもない名曲だけど、
The Beatlesには200いくつも名曲があるのに、
さも一番手Yesterday、次にLet It Be
Hey Judeというお決まりの定評に、
僕はずっと逆らってきたし、今もそう。
どれが一番なんてないんだ。

Yesterdayには数々のカヴァ・ヴァージョンをありますが、
中でもMarvin Gayeの歌がいい。
またこの曲に因んだ歌も作られていますが、
RCサクセションの「イエスタデイをうたって」が一番。
こういう一番ならすぐに決まるんだ。

そしてクロージング・ナンバーは、Larry Williamsのカヴァ。
実はこのアルバムでは、次のRubber Soulに入ってる
Waitもレコーディングされていたが、
最終的なアレンジがまだ決まっておらず、
Help!では一端保留にされた。
で、レコーディングの順序からいうと、
It's Only LoveがJohn Lennonの歌った最後の曲で、
Waitはこれを通過したものというのが分かる。

"アイドル・グループ"The Beatles最後のアルバム。
そう考えると、Dizzy Miss Lizzyで終るというのも、
感慨深いものがあります。