Disc 1
1. Odds and Ends
(Bob Dylan)
2. Orange Juice Blues (Blues for Breakfast)
(Richard Manuel)
3. Million Dollar Bash
(Bob Dylan)
4. Yazoo Street Scandal
(Robbie Robertson)
5. Goin' to Acapulco
(Bob Dylan)
6. Katie's Been Gone
(Richard Manuel/Robbie Robertson)
9. Lo and Behold
(Bob Dylan)
10. Bessie Smith
(Richard Manuel/Robbie Robertson)
11. Clothes Line Saga
(Bob Dylan)
12. Apple Suckling Tree
(Bob Dylan)
13. Please, Mrs. Henry
(Bob Dylan)
14. Tears of Rage
(Bob Dylan/Richard Manuel)

Disc 2
1. Too Much of Nothing
(Bob Dylan)
2. Yea! Heavy and a Bottle of Bread
(Bob Dylan)
3. Ain't No More Cane
(trad. arr. Bob Dylan)
4. Crash on the Levee (Down in the Flood)
(Bob Dylan)
5. Ruben Remus
(Richard Manuel/Robbie Robertson)
6. Tiny Montgomery
(Bob Dylan)
7. You Ain't Goin' Nowhere
(Bob Dylan)
8. Don't Ya Tell Henry
(Bob Dylan)
9. Nothing Was Delivered
(Bob Dylan)
10. Open the Door, Homer
(Bob Dylan)
11. Long Distance Operator
(Bob Dylan)
12. This Wheel's on Fire
(Rick Danko/Bob Dylan)

Originally Released June 26, 1975
Produced by Bob Dylan and The Band

子どもの頃に住んでいた団地には、地下室があった。
住民の物置になっており、処分しようと思っている
大型家具や、夏の間の暖房器具なんかを、
そこへ一時的に保管しておくのだった。

普段は格子状の扉で仕切られ、鍵が閉まっているが、
小学生の時分には、その隙間をすり抜けられたので、
しばしばかくれんぼの隠れ場所にしていた。

団地は東西冷戦の真っ只中にできたので、
その地下室は、いざという時の防空壕か
核シェルターなんだという噂があったが、
子どもが簡単にすり抜けられるところじゃ、
何の役にも立つはずがない。
 

 

 

 

1975年に出たこのBob Dylanのアルバムには、
『地下室』という邦題がつけられている。
1967年、バイク事故を起こして静養中のディランは、
Robbie Robertson以下、The Hawksのメンバーと、
ウッドストック近郊の邸宅、通称「ビッグ・ピンク」で、
様々な音を出しあいながら、非公式に録音していった。

その録音テープの存在は早くから知られていて、
有名なブートレグGreat White Wonderにも、
音源の一部が収録されていた。

つまり1975年になってこれを出したのは、
海賊版対策があった。
しかしそのまま出すのではなく、一部は
オーバー・ダブが加えられている。
2014年には、全セッションをコンプリートした、
CD6枚組『ブートレグ・シリーズ』の第11弾も出ている。

演奏の多くは、ディランとホークスが気儘に音を出しあい、
そこにディランが、これまた気儘に、
ナンセンスと言ってもいい言葉を当てはめている。
ディランは気儘だが、ホークスは強かで、
I Shall Be RealeasedTears of Rage、
This Wheel's on Fire
は、後にThe Bandの
ファースト・アルバムに収録されることになる。

西岡恭蔵さんは「春一番」という歌の中で、
ウッドストックを意味するヤスガーさんの農場について
触れているが、その視線は、音楽祭だけではなく、
その裏でBob DylanとThe Bandの音遊びを捉えていた。