1. Help! 
(John Lennon/Paul McCartney) 
2. I'm Down 
(John Lennon/Paul McCartney) 

Originally Released July 23, 1965

「おいっす!!」
正しくは「ヘルプ!」だけど、
John Lennonは確かにそう言ってる。
そういうふうに歌いだしている。
ドリフの長さんなのである。

それにしても僕は、1964~65年頃の
The Beatlesのサウンドに心底参っている。
この時期、John Lennonはアコースティック・ギターを多用し、
これでザクザクとリフを刻んで、グルーヴを生み出している。
とにかく物凄くスイングしてるのだ。
アコギでこれだけスイングできるのは、
John Lennonと忌野清志郎くらいだろう。

この曲はご存じのように映画の主題歌。
そしてI'm a Loserに続く
John Lennonが"自分の事を歌った曲"第二弾である。
「後になって、ぼくは助けを求めて
本当に大きな声で叫んでいたことがわかった」
John Lennonはそう述べていた。
軽快なサウンドでオブラートに包んでいるけど、
歌詞はとてもヘヴィだ。

大体、ヒットを約束されたアイドル・グループの
シングルA面が、「助けて!」だ。
これが発売された当時は、誰もそれが
John Lennonの心の声だとは受け取らなかった。
肝心なのは、アッパーなサウンドで
オブラートに包んでいようがなんだろうが、
こうした表現をしていいんだと、皆に気付かせたこと。
しかもこの性急なビートは、
心底切羽詰まってることをよく表している。
色々と表現の幅を広げたThe Beatlesだけど、
最も重要なのは、歌の題材を増やしたことだった。
 

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Aerosmithのカヴァでも有名なI'm Down
A面曲同様、この曲も本来は
5枚目のアルバム用にレコーディングしたものである。
しかしこの曲を録音した2時間後、
Paul McCartneyはあのYesterdayをレコーディングした。
この手の曲なら、Tell Me What You Sheや、
John Lennonが歌ったDizzy Miss Lizzyがあるし、
I'm Downをアルバムから削っても、
Paul McCartneyには大した痛手ではない。
何故ならこの半年後にはMichelleへいってるから。

Beatles For SaleでPaul McCartneyは
ハモンドオルガンやピアノを、
この曲ではJohn Lennonがオルガンを弾いている。
これまでは、キーボードが欲しいとなると、
George Martinが演奏していたけれども、
Help!を境に、メンバー自身でやるようになったのである。

Miles Davisがニューヨークにやってきた頃。
「ピアノを弾いてみろ」とDizzy Gillespieにアドバイスされ、
これが音階や音域に対する理解を深めていったわけですが、
同じことが、John LennonとPaul McCartneyにも作用した。
そして皮肉なことに、2人の音楽に対するアプローチの違いも、
よりはっきりしていったのである。